おいしさと健康~創業の精神を受け継ぐ社会貢献活動~
企業名 | 江崎グリコ株式会社 |
---|---|
代表者名 | 代表取締役社長 江崎 勝久 |
設立 | 昭和4年2月11日 |
資本金 | 7,773百万円(平成21年3月31日現在) |
社員数 | 4,882名 (平成21年3月31日現在) |
所在地 | 大阪府大阪市西淀川区歌島4-6-5 |
主な事業活動 | 食品の製造販売 |
ホームページ | |
掲載日 | 平成21年8月5日 |
江崎グリコ株式会社
広報IR部参事 南賀哲也さん
グリコピア神戸館長 湯地孝文さん
菓子営業部近畿統括支店神戸支店長 釜鳴秀明さん
にお話を伺いました。
江崎グリコ株式会社は「企業の社会的責任(CSR)」についてどのようにお考えですか?
創業者である江崎利一は、商売について学んだ先生から「商売は自分のためだけにあるのではない。世の中のためになるものでなければいけない。」と教わり、父親からも「余裕ができたら、社会のためにお金を使うように」と言われていました。利一は「食品を通じて、人々の健康に役立ちたい」という思いで創業し、その精神は今日も私たちの企業理念「おいしさと健康」として受け継がれています。事業そのものを通じて社会貢献することがグリコの使命だと考えています。
創業者は薬種業であったそうですが、なぜ製菓業を始められたのですか?
利一は牡蠣に含まれるグリコーゲンに着目し、役立てる方法がないか考えていました。長男の病気を経験し子どもたちの健康を思う心から、当時子どもたちに人気のあったキャラメルにグリコーゲンを含ませ、「グリコ」が生まれました。薬ではなくお菓子の「グリコ」を創製したのは、健康の維持・増進を目的に考えたからです。
おもちゃ付きのグリコにも、創業者の「食べることと遊ぶことは子どもの二大天職である」という考えから、グリコーゲン入りのキャラメルを食べて身体の健康に役立ててもらい、おもちゃで遊んで心の健康と情操の発育に役立てて欲しいという思いが込められています。
(財)母子健康協会を支援されていますね。
1934年(昭和9年)に母と子の健康増進を目的に、江崎が私費を投じて(財)母子健康協会を設立し、現在は協賛というかたちで支援し続けています。
発足当時は子どもたちの体格や体力の向上を図るため、大阪市就学児童優等体格健康褒章会を開催し、1951年(昭和26年)からはこれを健康優良幼児表彰に発展させ、1986年(昭和61年)まで続けました。延べ8万人の候補者を審査し2,500組の母子を表彰しました。これを機に健康づくりを意識する母子が増え、「母子の健康増進」に貢献しました。
現在は、子どもの健康の増進や疾病予防とその治療に役立つ小児医学研究への助成を中心事業とし、シンポジウムの開催や機関誌「ふたば」の発刊など、子どもたちの健康と健やかな成長に貢献しています。
さまざまな形で食育に取り組んでおられますね。
その代表的なものがグリコピア神戸です。神戸に工場を建設する際に、地域の人々に見ていただけるような施設にできないかと考えたことが開館のきっかけです。私たちは商品になって店頭で売られているものを食べていただくだけではなく、それがどのように作られているか知っていただくことが非常に重要だと考えています。製品が作られるところを見つつ、楽しんでいただけるスペースを提供したいという思いから、当館を「お菓子の工園」と呼んでいます。
どのようなCSR活動をされていますか?
神戸グリコでは地元地域への社会貢献の一環として、中学生の職場体験を受け入れています。
またグリコピア神戸は小学校の校外学習では、神戸市内から年間100~110校の児童を迎えています。館内ではコンパニオンが小中学生を案内して回ります。当初は一般のお客様と同じ見学コースでしたが、校外学習の生徒さんには環境についても学んでいただけるよう、二酸化炭素の削減やゴミの再利用についてのパネル展示や自家発電の体験ができる環境コーナーを設け、プログラムに加えています。
また近年、福祉施設の方の利用が増加しています。20年前の開館時にはバリアフリーは考えていなかったので階段の多い構造ですが、エレベーターなどを新たに設置し、多くの方にご利用いただけるよう改善しました。
グリコピア神戸以外の食品を通じたCSR活動は?
虫歯予防の活動を行っています。お菓子など甘いものを食べ過ぎると虫歯のリスクが高まります。私たちは独自に開発した成分、リン酸化オリゴ糖カルシウムが含まれるガムを商品化し、歯のケアにうまく利用していただく啓発活動を行っています。
幼稚園・保育園から依頼があれば出向き、歯科衛生士によるブラッシングの指導や保護者に対して虫歯ができる原因やケアの大切さを伝えています。園児の歯を丈夫で健康にするために、食後にこのガムを噛ませることを提案しています。
これは、食品事業そのもので社会貢献をしたいという、私たちの企業理念に合致するものだと考えています。
地域ではどのような活動をされていますか?
西神中央駅周辺企業共同企画「サンタが町にやってくる!?」に協力しました。神戸市営地下鉄西神中央駅前で、地元を盛り上げようと社員7人がサンタクロースに扮し、商業施設を訪れた子どもたちにビスコなどのお菓子をプレゼントしました。
グリコグループのアイクレオ柏原工場(兵庫県丹波市)は、地域のお祭で「赤ちゃんとお母さんのための休憩所」を開設しました。赤ちゃん連れの家族の休憩所、授乳及びオムツ替えの場所を無料で提供するものです。会場では来場されたお母さんから製品についての感想を伺うこともでき、今後もぜひ参加したいと思っています。
直接コミュニケーションを取ることを大切にされていますね?
メーカーはどうしてもお客様とお話しする機会が少なくなりがちです。直接関わる場を持つことで、お客様が商品を手にとり喜んでくださる姿を見たり、ちょっとした疑問や感想を聞いたりすることができます。食の安全性に対する関心が高まる中、グリコピア神戸に来られた方からは「生産工程を最初から最後まで見たことで安心した」という声をたくさんいただいています。お客様にとっても、よい機会となっているようです。
残念ながら、見学用に作られていない他の工場は、地域の人には見ていただくことができないのですが、従業員の家族の見学を受け入れるようにしています。従業員のお子さんのような身近なところからでも食育を進めることは、十分に意味があると考え実施しています。
環境保全への取り組みは?
企業活動から地球環境に与える影響を最小限に抑えることも私たちの義務であると考えます。製品のパッケージでは包装材料の軽量化や分別しやすい材料の使用と表示で、環境にやさしい製品設計に取り組んでいます。また、工場などの設備の省エネ化や食堂からでる生ゴミのリサイクル、廃棄物の分別によるゴミの削減を進めています。
これから社会貢献活動を始めようとする企業にメッセージをお願いします。
松下幸之助さんの言葉に「赤字は悪だ」というのがあります。企業が利益を得られないのは、お客様からの支持や評価を得られていないからです。逆に言えば、社会で生き残る企業は、世の中に支持されているのであり、支持されているということは世の中の役に立っているということです。まずは自社の事業がどのようにすれば社会の役に立つのかを考えることが大切だと思います。
本日はありがとうございました。