企業の技術を社会貢献活動に生かす
今回は、有限会社夢前夢工房代表取締役社長 衣笠愛之さんからのご紹介で、有限会社エムアンドティ企画 代表取締役 武内美佳さんにお話を伺いました。
障害者・高齢者向けパソコン教室のボランティア講師をはじめたきっかけを教えてください。
姫路の会社で10年間、経理の仕事やワープロ研修などを担当していましたが、退社後、自宅で「武内ビジネススクール」という会社をつくりました。ワープロ教室をはじめて2年経った頃、新宮町の福祉会館主催で障害者を対象としたワープロ教室を開催するにあたり講師を探されていました。すでに2人の講師に断られ私には3人目の依頼でした。そのお話をお聞きし、躊躇なく引き受けました。もう亡くなりましたが、私の8歳年下の弟が障害者であったことも私の背中を押してくれました。
15名の生徒さんを半年間教えるというコースでしたが、受講者からの要望で半年延長になりました。それも終了すると、有志でこの教室を継続したいという声により、私がボランティア講師となって月2回の教室を続けることになりました。
その教室は今も続いていて、すでに10年になります。教室を手伝ってくれていた人たちから『パソコンお助けたい「来夢」』というボランティアグループが生まれ、今はたつの市全域の約20名の障害者のみなさんと高齢者にもパソコンを教えています。
どのような経緯でNPO法人を設立し、企業活動と両立されたのでしょうか。
障害者のパソコン教室に通っていた人たちの中に、パソコンを楽しむだけでなく、スキルを上げ在宅ワークを目指している方が数人おられました。その方々から、武内ビジネススクールが開催する教室に通いたいという希望が出されました。しかし、ビジネススクールの受講料は1回2,500円で経済的にも負担が大きく、企業として他の生徒さんからは受講料をいただいているわけですから、障害を持った方だけを特別扱いすることは出来ませんでした。
葛藤の結果、ビジネススクールとは分離した『愛ランド』を設立し、障害者・高齢者に対して、パソコン操作技術を活用し自立した生活と社会参加を支援する事業を行うことにしましたのが2002年4月です。
2000年に『有限会社エムアンドティ企画』を設立しており、2004年には『愛ランド』が特定非営利活動法人の認証を受けました。
今では『愛ランド』の活動がいろいろな方面に広がっていますね。
当社の建物は3年前に建設しましたが、開発許可等の関係により思いがけず大規模な建物になってしまいました。それなら『愛ランド』も充実させようとのスタッフの思いつき(笑)で、近所の人たちが集える交流サロンを作って、誰でも気軽に自分の作った作品を展示できるレンタルボックスを設置したり、講座を開催するようになりました。
サロンでは、最初近隣の授産所が作ったパンを仕入れて販売していましたが、『(有)エムアンドティ企画』のデータ入力在宅ワーカーの中にパンを焼ける人がおり、週2回程度焼きたてのパンを販売するようになりました。近所に焼きたてのパンを買える店がないことから評判になり、毎日焼くようになりました。
今では、外出が難しいデイサービスやグループホームをはじめ、学校などへも出張販売に行っています。
企業活動と『愛ランド』の活動が相互に支え合っていますね。
『(有)エムアンドティ企画』では、会社勤めの頃に考えていた「企業の経費節減を指導する」ための各種事業を行っていますが、それらの業務補助を『愛ランド』のメンバーにも発注しています。
また、『愛ランド』のパン専属スタッフ2人のうち1人は、前に申し上げた『(有)エムアンドティ企画』の在宅ワーカーで、もう一人はWebデザイナーで、パティシエになりたかったという話を聞き、『愛ランド』にスカウトしました(笑)。
『愛ランド』は8名のスタッフが責任を持って事業を進めており、ひとり立ちしていっています。これからは、NPOで行うことが難しい部分である『愛ランド』の営業面を、『(有)エムアンドティ企画』がサポートしていければいいと思います。
これから「社会貢献活動」に取り組もうとされている企業に対して一言をお願いします。
人は、楽しいものには進んで参加します。「社会貢献活動」も楽しくなければ参加しませんし、長続きもしません。私の場合、たまたま手を伸ばしたものが「社会貢献活動」であり、楽しいし、必要としてくれる人がいるから今でも続けています。そして、目の前の課題を解決していたらここまで来ていた、という感じですね。
「社会貢献」といっても、たいそうに考えることはないと思います。ちょっとしたことでも「社会貢献活動」につながります。例えば、障害者への仕事の発注といったことも「社会貢献」ではないでしょうか。自立をして仕事をしたいと思っている障害者の方もたくさんいます、そんな障害者の方の夢に近づけるようにあらゆる面でサポートを行っていきたいと思っています。
また、すでに「社会貢献活動」に取り組んでいる企業と手をつなぐという方法もあるでしょう。人と人がつながって、大きな輪になり、信頼という絆になっていくと思います。
「社会貢献活動」とは、自分の会社や社員が持っているものをもっと伸ばして、より良い企業にするものと考えてはどうでしょうか。