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兵庫県内の社会貢献企業を紹介

多様な活動資源とノウハウを持つ「企業」の社会貢献活動を促進し、「ひょうごの地域づくり活動」の輪を一層広げていくため、県内企業による社会貢献活動の実践事例や県の支援・促進施策をご紹介します。

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“組合員どうしの支え合い”から生まれる社会貢献
~地域に必要な組織を目指して~

神戸地域

事業者名 生活協同組合コープこうべ
代表者名 組合長理事 本田 英一
設立 1921年
資本金  445.5億円
 社員数 10,515名
所在地 兵庫県神戸市東灘区住吉本町1丁目3番19号
主な事業活動 店舗事業・宅配事業・共済事業・生産事業 等
ホームページ http://www.kobe.coop.or.jp/
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掲載日 平成25年10月30日

生活協同組合コープこうべ 組合員活動部長 江見 淳さんにお話を伺いました。

 生活協同組合の活動についてお聞かせください

                                                 

 まずは、生協ってなにかということをご説明します。生協(コープ)は「消費生活協同組合」の略称で、 消費者が自分たちの暮らしをよりよくしていくために、みんなでお金を出資して、いろいろな活動を行っていく組織です。株式会社と異なり、生協は営利目的で活動してはいけないことが消費生活協同組合法に定められており、 「組合員どうしが力を合わせて生活をよりよくし、社会貢献をする」ことが生協のめざすことです。
 設立から90年以上の歴史をもつコープこうべは、兵庫県内と、大阪府の北摂地域、京都府京丹後市を活動エリアとして現在167万世帯の組合員が加入しています。
 活動は多岐にわたりますが、みなさんが良く目にするのは、「コープ」と呼ぶ店舗や、週に一度トラックで商品を配達する「宅配」など、商品利用をとおした事業でしょう。
 それ以外にも、コープこうべでは、組合員が集まって地域でいろんな社会貢献活動を行う地域コープ委員会やコープくらぶ、コープサークルなどのグループをつくって、組合員が、自分たちの関心が高い分野の活動に参加しています。
 コープの商品の購入と利用だけでなく、これらが地域とつながる社会貢献活動となります。利用するのも活動するのも組合員というのが、生協の姿です。

さまざまな社会貢献活動をされているようですが、まずは福祉分野の活動について教えてください

                         

 阪神淡路大震災の経験から、コープこうべでは、「福祉文化憲章」を定めました。この中に基本理念と行動指針を掲げ、愛と協同の精神をはぐくみ、ボランティア活動や生涯学習を通じて、いたわりと思いやりのある人づくりを目指しています。
 この「憲章」を具体化している活動から今回は5つを説明します。


 1つ目として「福祉ボランティアサークル」というもの
があり、組合員がサークルや地域コープ委員会などのグループを立ち上げて、地域にある施設等でのボランティアなどのお手伝いなど地域の実情に合わせた幅広い活動をさまざまに行っています。
 2つ目の「コープ暮らしの助け合いの会」は、高齢者や体の少し不自由な方たちが地域で自立して生活できるように、彼らのニーズにあったお手伝いを、組合員が有償で行っているボランティア活動です。 日常のちょっとしたお手伝いをしてほしいというニーズは近年増えていますし、いずれ自分も人のお世話になるのなら、今できるときに人を助けたいという組合員は多くおられます。それをつなぎ合わせ、支援を受ける「利用会員」と、 支援する「奉仕会員」をコーディネートしたりするしくみも持っています。
 3つ目の「コープふれあい食事会」は、地域の一人暮らし高齢者や老夫婦世帯を対象に栄養バランスを考えた食事を通して、栄養が偏りがちな高齢者の人たちの食事改善や悩み事を聞いたりする活動をしています。これによく似た活動が、4つ目の「ふれあいサロン」です。 ふれあいサロンは世代を超えて地域に暮らす人が、地域のコミュニティの場所を設けて、引きこもりがちな高齢者の人の情報交換や友達作りの場にし、いきいきと暮らしていくお手伝いをしていこうという活動です。これらは、コープの店の組合員集会室や地域の集会所などで行っています。
 5つ目は募金活動です。コープこうべでは、毎月いろいろな分野で募金活動しています。
 ともしびボランティア募金は、コープこうべが設立したコープともしびボランティア財団をとおして兵庫県内の、くらしを支えるボランティア活動支援に活用する資金を募ります。福祉のボランティアを支える募金も大切なボランティアだと 位置づけています。また、これらの活動も、地域で行っている組合員活動の中心となっています。

「くらしの助け合いの会」について詳しくお聞かせください

                         

 くらしの助け合いの会は、援助の活動を行う「奉仕会員」と支援を希望される「利用会員」から成っています。組合員であれば誰でも登録することができます。 利用者からの希望が多い活動は、掃除や荷物の整理、洗濯ですね。また、身体が不自由なのでベッドから起き上がるのを手伝ってほしい、などの要請はヘルパーの資格がないとできない決まりになっていますので、そういった資格等が必要な活動についてはコーディネーターが調整し、 ヘルパーさんにつないだりしています。奉仕会員としてこの活動をしていくうちに、ヘルパーの資格をとって介護事業の道へ進む方もいらっしゃいます。
 登録数は、2012年度は奉仕会員が550人、利用会員は610人で、利用会員の人数が奉仕会員の数を上回っています。利用会員の方は、サービスを利用する頻度が高い一方で、奉仕会員の方が活動できる時間が限られており、足りないのが現状です。 活動時間も増えつつありますが、細かいニーズにさらに応えていくことが求められていると考えています。
 

次に子育て支援について教えてください

 現在、子育て支援も、子育て中の組合員が、気軽に仲間と出会い、交流できる場づくりとしてコープ子育て広場を、組合員が自主的にサークルをつくって運営しています。
 子育て支援の1つである「コープ食育くらぶ」では、いろいろなところでサークルを立ち上げ、忙しくて時間のないお母さんのために食について学ぶイベントや、親子で食について考える料理教室などのイベントを地域で実施しています。
 また、食育の学習にも取り組んでいます。単にどう食べるかを学ぶのではなく、お米なら稲刈りや、野菜なら農家の栽培の見学を行う体験授業や兵庫漁連さんと兵庫県の海産物についての授業を行うマリンスクールを企画しています。これらの活動を通して、食べ物がどのように できていて、どう食べるべきなのか、何に気を付けなければならないのかを考え、食べることをどう捉えるのかを子どもたちに学んでほしいと考えています。自分たちが自然と共存しあいながら生活をし、生産者に自分たちが食すものを頼んで作ってもらっていることを知ってもらい、 それを責任もって食べる大切さを身に着けてもらう、といった生産者とのつながりを身近に感じてもらいたいです。そのため、できるだけ兵庫県内で生産されているものを中心に見学しています。「兵庫県の生産物を支えるには」を考え、 将来の地域発展や世界の食糧との付き合い方をどうするべきかを感じてもらえればと思います。

環境の分野では、どのような活動をされているのでしょうか

 環境活動については、くらしを少し見直すことで良くなる身近な活動をコツコツしています。たとえば、コープでは1978年からマイバック運動を始めており、今ではマイバックを持ってくるのが日常、といったところまで浸透しています。 もしレジ袋が必要な場合は、一枚5円での購入となっています。この5円は今後の環境活動へ使われることになります。資源のリサイクルも、他のスーパーが容器を使い捨てにしていく時代に、いち早く店舗で牛乳の紙パックのリサイクル回収を始めました。震災後から 環境共生型農園エコファームの取り組みをしていますが、これは、お店で出てくる生ごみを土に還して、その土を使って収穫したものを商品として再びお店で供給するといった生ごみの循環式の農業です。消費者は利用したものをリサイクルし、 それをまた使うことで資源の大切さを意識する責任があると思いますね。環境活動は「循環型」というのが主な特徴ですね。

リサイクルの取り組み活動について、それぞれの回収率はどれくらいでしょうか

 コープこうべでは現在、商品の包装やペットボトル・缶・ビン類など7品目をどこの店舗でも回収できるように リサイクルボックスを設置しています。お肉などのトレーはコープで供給したトレーとともにほかのスーパーのお店のトレーも回収されるので、130%ほどの回収率があります。また、ペットボトルは7割ですが、缶ビン類は10~20%といったところに なります。ただし、市によって行政の資源回収ルールが異なっていたりするので、地域によって回収率には差がありますね。

NPO法人や行政と連携して活動を進めているとのことですが、具体的にどのような活動をされているのでしょうか

 一例ですが西宮にあるNPO法人こども環境活動支援協会さんと一緒に、2008年度から10年間かけて子どもたちと山を整備する活動をしています。山を守るということは水、そして海を守ることであり、 最終的には食を守ることにもつながります。このことを、山の整備を通して学習してほしいと考えています。山の整備活動は専門性が高いので、専門知識がある森林組合や大学の教授や地域また行政の方に一緒に入ってもらい活動をしています。
 この活動は一例であり、活動の内容や分野でたくさんの組織の人とつながっています。兵庫県内地域のNPO法人さんとはそれぞれの分野のニーズに合ったつながりをしており、たくさんの組織の方といろいろな方面でつながりを持っています。

地域に対してどのような思いをお持ちなのでしょうか

 生活協同組合には、国際協同組合連合(ICA)が出した「協同組合原則」というものがあります。第1から第7原則まであり、 「コミュニティの持続可能な発展のために活動する」という第7原則は1995年に加わりました。これまでは組合員自身が組合員の暮らしをよくするためにと活動していましたが、それを地域に広げて、生協があるからこの地域のくらしに不安がないということを 目指していくことが、より生協が地域にとって必要な組織になって、社会をよりよくする力になると思います。
 コミュニティが持続しないと一人で暮らす人には不安が増えますね。それを未然に防ぎ、地域を守るために活躍する人を我々は支援しています。例えば、過疎地域では買い物をすることすら難しいことですが、そういった地域にお住まいの方のために 宅配サービスを行ったりしています。将来的には移動販売車で買い物ができるということも生協は目指しています。
 しかし、私たちが大切にしたいのは、コミュニティの自立です。行政からの支援を待っているだけではいけない。自分たちで考え、人とつながり、自治をする地域コミュニティを作っていくこと、これこそが大切だと感じています。コープの組合員の中で 「NPO法人さんに来てもらって、コーディネートしてもらって、意見を出し合おう」「サークルを立ち上げて、地域の催し物をしよう」など意見を出し合い、コープこうべはそういった場を提供することで地域のかかわりを強くしていく。そういった活動を通して、 地域の中に自立した考え方を持ってもらいたいと考えています。あくまでコープこうべの発展ではなく、地域の発展を目指しているので、コープこうべは場の提供をする程度で、間接的な関わり方で支援をします。組合員自身で何をしたいかと言うことを引き出し、 それを実践していくことが大切であり、コープこうべは、そんな組合員のサポートをしていくというスタンスです。

課題点、問題点についてお聞かせください

 今後高齢化が進むと、助けてほしいという支援のニーズは多いけれども、それに応えるための人数が足りなくなることが課題だと考えています。「くらしの助け合いの会」でもそうですが、何とか一人で自立したいと考えている人は増えつつあります。 しかし、それをサポートする人はなかなか増えないというのが現状です。これは意識や視点の差があることが原因と考えられます。その差を埋めるために、地域のいろんな立場・世代の人を集まる機会を設けたいと思っています。その1つの機会として、コープこうべが店舗に 来られるいろんな世代の方に、常にメッセージを伝えれば、それに共感してくれた人たちの関心を寄せることが出来るのではと考えています。
 また、地域内での差を埋めていくための対応の1つとして、福祉のボランティアを増やしたいと思っています。そのためには市民ひとりひとり問題意識と、多様な価値観や思想を持つ人とも連携していく寛容さが必要です。 自分の考えをしっかり持ち、受動的ではなく1人1人が能動的に行動していくことが大事だと考えています。神戸市内は組合員数が圧倒的に多いので、生協から組合員に何かを発信するということが、市民に直接メッセージを届けることに繋がります。 そうやって、学ぶ機会・伝える機会というものを地域に対して増やしていきたいです。

今後の抱負、活動の展開をお聞かせください

 先ほどの課題を解決することは勿論ですが、様々な悩み事を解決する仕組みを持ちたいと考えています。福祉であれば、 こうした助け合いの会を運営していくというのも一つの方法ですが、ニーズの高い福祉に関してはどんどん広げていきたいと思っています。
 また、コミュニティの発展のために、地域のイベントや自治会のお祭りをするときには協同するなどして支えられたら、と思っています。消費者市民の参加を広げていって、より生協として知名度が上がり利用者も増え、 商品だけでなく活動も「生協=安心・安全」を認知してもらえるようにしていきたいと考えています。

今後社会に出る学生に対してメッセージをお願いします

 社会に出るときだけでなく、今現在でも、人と関わる時には、“相手が今、何を思っているか”を感じ取るセンスが問われます。 今はネットを通した会話が増えていますが、その反面、相手と直接向き合って話し合う機会というものが減っていると感じます。相手と生の会話をする機会が減るということは、本当に相手が思っていることを読み取る力が育ちにくくなると言えるでしょう。 確かに通信ツールを使ってコミュニケーションをとることは今の時代に沿ったことですが、それと同じくらい生の会話をしないと、人の考えを理解する能力の減退につながってしまいます。学生さんには、いろんなところに行って人と意見を交わしあう 経験をしてほしいですね。それが自分を見つけることにもつながります。
 また、学生さんにはぜひ、自分と社会のつながりというものを考えてほしいです。仕事をすることが社会とつながるということ、とも言えますが、まずは自分が地域の中で何をしているかを考えてほしいです。ちょっとでも地域とつながることをしていれば、 社会に出るときにも自分の役目というものが見えてきやすいと思います。学生のうちに、まずは地域にとっての自分というものを考えてみてほしいですね。

取材を終えて・・・

<甲南女子大学 人間科学部心理学科 3年 西田 早希>
<甲南女子大学 人間科学部心理学科 2年 小坂田 美香>
<甲南女子大学 文学部メディア表現学科 3年 石川 里穂>
 私たち自身、地域とのつながりというものを日頃から意識することはありませんでした。しかし、“組合員が自分たちの暮らしをよりよくするために出資し、組合員自ら活動する”というコープこうべさんの体制、そして“自立したコミュニティ”になることを 目指す熱い想いを知り、地域とそこで生きる自分というものを改めて考え直すことが出来ました。自立したコミュニティとなるために、地域に住む者同士が自分たちで今生きている地域に恩返しをしようという想いを持ち、何か小さなことからでも始めることが大切だと感じました。
 また、江見さんの「相手と直接向き合って話し合う機会が減っている」という言葉にドキリとしました。メールやインターネット等を通しての会話は日常となっていたため、考えたこともありませんでした。画面を通して見えない相手と会話するより、相手と直接向き合って 対話することが、自分と人、さらに地域を結ぶ第一歩にもなると気付かされました。貴重なお話をありがとうございました!

本日はありがとうございました。

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