小さなまちの地元企業が但馬を盛り上げる
~歌と映画と武将と『おばあかふぇ』~
事業者名 | 遊月亭株式会社但馬寿 |
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代表者名 | 代表取締役社長 山内 博次 |
設立 | 昭和62年3月 |
資本金 | 5,000万円 |
社員数 | 73名 |
所在地 | 兵庫県美方郡新温泉町細田6-6 |
主な事業活動 |
観光土産菓子の製造・販売 |
ホームページ | http://www.yuzukitei.com/ 遊月亭株式会社但馬寿のページへ |
掲載日 | 平成27年6月26日 |
遊月亭株式会社但馬寿
常務取締役 久村 謙蔵 さん
通心販売部音楽・広報担当 勝地 哲平 さん
にお話を伺いました。
遊月亭誕生秘話があるとお聞きしました
十数年前、従業員の息子さんが交通事故で亡くなられました。そのときの従業員の相当な悲しみ・苦しみを目の当たりにした社長が、飯田史彦著「生きがいの創造」という本を贈ったのですが、その本には、とても心に残る言葉がありました。
『生まれてきた目的は夢をつかむことではなく、夢に精一杯挑戦したかどうかという精神的成果をつかむこと』。
そして、あるとき、満月をみたこの従業員が「幼少期の息子があの月で楽しく遊んでいて『母さん、がんばれ』と言ってくれているような気がする・・・」とつぶやきました。そのときうまれたのが【遊月亭】という屋号です。
この本や周りの人たちからの励まし、応援によって徐々に元気を取り戻していった従業員は、【遊月亭】という屋号とともに、心を込めた商品をお客様にお届けしようと無我夢中で取り組みました。商品パッケージには【遊月亭】という屋号を使い、通信販売のお客様には心のこもった手紙と手作りのパッチワークコースターを付けてお届けしたところ、大反響となり、お礼や感動のお言葉・お手紙をたくさんいただき、また、売上もアップしました。
この誕生秘話は私たちの今の取り組みの礎、そして生きがいとなっています。
遊月亭の取り組みについて、教えてください
遊月亭は、観光土産菓子の製造・販売を主事業としています。通信販売のほか、湯村温泉街ではアンテナショップ『おばあかふぇ』を運営しています。ただ物を売るのではなく、地元産の物を使うことはもちろんのこと、自分たち自身が楽しみながら、元気になる取り組みを行うことで但馬を盛り上げたい、と思っています。
『おばあかふぇ』のことを教えてください
但馬地方に脈々と受け継がれてきた郷土食の知恵を若い世代に伝えたいと、湯村温泉街の古民家を活用して『おばあかふぇ』を平成21年10月3日にオープンしました。
そして、『おばあかふぇ』を切り盛りするのは遊月亭OBの9人のおばあたちです。“おばあ”と言っても、60歳代・70歳代の若いおばあたちです。「1.人の話を聞かない、2.我が道を行く、3.ぼろくそに言われてもへこたれない!」といった条件をクリアしたおばあたちは、自由にのびのびと、一人ひとりが主体性を持って働いています。
遊月亭の看板商品である黒豆茶の試飲や名物の栃おはぎを楽しむことができるほか、おばあたちの手作り加工食品や雑貨が並んでいます。
『おばあかふぇ』の店内はにぎやかですね
おばあたちは、それぞれに特技を持っており、その特技を大いに活かしています。
料理上手なおばあは、但馬地方で古くから根付いてきた保存食文化を若い世代に伝えたいとの想いから、ふきや黒豆、大根など地元の食材を使用した家庭の味を提供しています。また、手芸や裁縫が得意なおばあは、パッチワークのタペストリーや小物を手作りしています。
そして、店内にはたくさんの色紙が張り巡らされています。この色紙に書かれているのはすべて実際におばあから発せられた名言、おばあによる珍行動です。“わしゃ死ぬまで生きたる” “おばあ鈍感 お金にはなぜか敏感” “まちがえてもいいよ おばあのとっけん”などなど・・・。お客様からも「おもしろい」「楽しい」とお褒めの言葉をいただいています。
自由奔放なおばあたちですが、自由に楽しく、温かい笑顔でお客様を迎え入れるおばあたちのポジディブな力があるからこそ、湯村だけでなく、但馬を元気にしてくれる要因となっているのかもしれません。
ほかにもユニークな取り組みをされていますね
まずは、『おばあかふぇ』でも流れている「歌」です。但馬ならではの方言や特産品をネタにしたご当地ソングを、常務がこれまで60曲近く作ってきました。歌い手は社員。『遊月亭いく蔵』の名で活躍しており、「但馬ファンファンフェスタ」など、いろいろなイベントに参加し、歌で会場を楽しく盛り上げています。100曲制作することが目標です。
次は、「映画」です。常務自身が脚本・監督を手がけ、養父市立広谷小学校の児童や地元の方々の協力と、但馬地域の企業の協賛を得て、「いいぞ!最後までがんばれ!」という映画を制作し、絵本も同時に作成しました。挿入歌ももちろん自作、歌い手は『遊月亭いく蔵』です。結果はどうであれ最後までやり抜くこと大切さや、人と比べるのではなく最後まであきらめずにがむしゃらにやりきることで人生の突破口が見つかる、との想いで制作したこの作品は、地元の学校の道徳教育でも活用されており、私たちの想いが子ども達に伝わることを大変有り難く、嬉しく思っています。
もう一つは、「武将」です。但馬の仲間4人で立ち上げた『但馬無駄4武将』のうち、常務は“無駄信長”を務めています。3市2町による但馬の広大な面積の“但馬國の統一”を目指し、人と人のつながりが楽しくスムーズになるよう、甲冑の衣装でいろいろな場所に登場しています。
いずれも自分たちが楽しみながら取り組むことで、地域の人が元気になり、但馬全体が元気になることを願っています。
遊月亭の夢についてお聞かせください
私たちが目指すのは、“一人ひとりの夢が叶うようにする事”です。個人の夢を実現させ、その夢の集大成が理想の村となる。それは100年、1000年かかるかもしれないが、その夢に向かっていることが、本当の生きがいや楽しさであり、それを『遊月村未来千年構想』としています。
その村は、世の中の情勢に左右されない村で、基本は『自給自足』『生涯現役』。あとは自分の夢、やりたいことを実践し、人に喜ばれる物を創り、提供していく。年長者への礼節は重んじるが上下関係はなく、一人の信頼される長がいて、いろいろな意見を聞きながら最終決断をするが、普段は表に出ず、危機の時に指揮をとる。そして、同じような志をもったところとのネットワークを大切にし、交流をする。
まさに、この村の縮図が『おばあかふぇ』です。一人ひとりが生きがいと楽しさをもって一生懸命取り組み、一人ひとりが主役となって人と人とのつながりを大切にしながら、温もり・元気・喜びを提供していきたいと考えています。
本日はありがとうございました。