「ヒガシマルがあって良かったなぁ」の経営理念のもとに
企業名 | ヒガシマル醤油株式会社 |
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代表者名 | 代表取締役社長 淺井 昌信 |
設立 | 昭和17年3月5日 |
資本金 | 5億4,500万円 |
社員数 | 443人 |
所在地 | 兵庫県たつの市龍野町富永100-3 |
主な事業活動 | 醤油の製造販売、各種液体調味料の製造販売、各種粉末調味料の販売 |
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掲載日 | 平成22年10月4日 |
ヒガシマル醤油株式会社 取締役 CSR推進部長 淺井良昭さんにお話を伺いました。
御社が取り組まれている環境活動について教えて下さい
日本の淡口醤油はここ、たつの市が発祥です。これは、同市を流れる揖保川の伏流水が淡口醤油を作るのに最適な「軟水」であるということが大きな理由です。特産品は周りに上質な原料があることから誕生します。食品メーカーとして、自然の恩恵を多く受けていますので、特に環境には気を使っています。
揖保川の清掃活動は20年以上前から実施しています。年に2回程度ですが、社員で参加できる人は総動員しています。
また、工場排水は綺麗に浄化してから放流しています。その水で鯉を飼育し、水が綺麗になっている事を目に見える形で実感してもらえるように工夫しています。
その他、醤油を作る過程でアルコール発酵した空気が発生しますが、周囲に匂いがしないように部屋を密閉したうえで、吸引・燃焼させています。
最近では、もろみを絞った醤油かす粕をペレット状に加工して、堆肥として醤油の原料となる麦畑に撒くという取り組みも始めました。醤油かす粕には塩分が含まれており、どの程度撒けば効果があるか試験段階ですが、この取り組みが上手くいけば資源循環型の醤油造りの良いモデルケースになるのではないでしょうか。
食育活動も行われているようですね
龍野発祥の淡口醤油を広く知ってもらいたいという思いから、簡単に醤油の製造工程を知ってもらえるように小学校への出前教室や、中学校の授業の一環として6カ月かけて本格的な手づくり醤油の作り方教室を行っています。手づくり醤油は班ごとに取り組み、夏休みの間に週1回学校へ醤油をかき混ぜに行く“醤油当番”が設けられています。どれくらいまじめに醤油の世話をしたかで、出来上がりも班ごとでずいぶん違うものになります。
また平成21,22年たつの市「たつのまちづくり塾」事業として、『たつのハートごはん』という活動を行っています。地元に多くの食品企業があるという特性を活かし、食を通じてたつのを元気にしたいという思いや、かまどで炊いたごはんのおいしさや食の大切さを子どもたちに知ってほしいという思いから、このような活動を開始しました。
『たつのハートごはん』の活動を詳しく教えて下さい
『たつのハートごはん』では、たつの市内の小学校へお釜を持って出かけます。昨年は合計30回ほどの活動がありました。給食のごはんを子どもたちが自らお釜を使って炊くのですが、最近は煙が目にしみることも知らない子が多く、かまどの火の前で一生懸命、涙を流しながら頑張ってくれています。また、「かまどで炊いたごはん、おいしかったぁ~。」で終わってしまうのではなく、2週間食事記録を付けるチェックシートを配ったり、ロゴ入りお箸をプレゼントしたりして、いつでもたつのハートごはんを思い出しながらごはんを食べてもらえる工夫をしています。その他に、地元のスーパーに協力してもらい、店頭で活動のDVDを流したり、のぼりを立ててもらって食育啓発も行っています。活動を続けていくことで、「たつのといえばハートごはん」と思ってもらえるようになれば、食育に対する意識も上がるのではないでしょうか。
また、メンバーにはJA兵庫西さんや揖保之糸さんにも入ってもらっています。それぞれの人脈を使い、お釜やテントなど出来るだけ機材を持ち寄り、得意分野を組み合わせて活動しています。現在は行政のまちづくり塾事業の一環として行っていますが、これからもっと地元の人にも参加してもらい、まちづくり塾の事業でなくなっても継続できる活動にしたいと思っています。
地場産の原料のみを使用した商品について教えて下さい。
10年前、仕入担当が「淡口醤油は素材を活かす商品なので、原料からこだわった商品を造りたい」と考えたのが、きっかけでした。
その当時、空き田んぼを活用して小麦づくりをしているところが多くありました。小麦の刈り入れ時期は6月頃なのですが、田植えの段取りや入梅前の収穫を優先するあまり、小麦の完熟を待たず梅雨時期の前に早刈りをして出荷されていました。
龍野は醤油、そうめん生産の盛んな地であり、地場の良い小麦が取れる環境は昔からありました。そこで、直接農家にヒガシマル醤油用の完熟小麦の生産をお願いすることになりました。
平成13年、畑を借りてテスト栽培し、翌年実証圃で栽培した小麦で良い醤油が造れることを確認しました。この取り組みの中で、醤油仕込み用の完熟小麦の栽培ごよみを作成し、生産の過程を管理することで、生産量を伸ばしていきました。また、小麦の質向上の為に各生産者団体から代表者が一人ずつ参加して、研修会や講習会、圃場廻りを行いました。通常より手間のかかる作業をお願いしなくてはいけなかったので、生産農家との信頼関係が築けなければ、完熟小麦の生産は難しかったと思います。
当時、地元の生産農家はそれまで自分の田んぼで作った小麦が、何に使われどんな商品になるのか知りもしませんでした。それが、現在は、自分たちの生産した小麦が地元企業ヒガシマルの最高級淡口醤油になり、生産農家の人たちに「自分たちが日本一の淡口醤油の原料を造った」と自慢してもらえることが、一番の成果だったと思います。
社員とCSRの係わり方について教えて下さい
当社で古くから語り継がれている経営理念として、消費者、取引先、従業員、地域に対して「ヒガシマルがあってよかったなぁ」と心から言われる会社づくりを目指す。というものがあります。この理念に流れる精神はCSR(企業の社会的責任)というものに基づいています。しかし、CSRという言葉は難しく、馴染みないのが現状です。そのCSRをもっと身近に感じてもらうために、3年前から『よかったなぁ手帳』という当社のCSRについてまとめた冊子を作り、パートや派遣社員を含む全社員に配布しています。朝礼などの時間を利用して手帳を読み合わせたり、CSRについて話し合いを行ったりする際に活用しています。
また、お客様の目を意識するために、工場見学のルートに、社員が職場紹介や仕事に対する思いをパネルにして掲示しています。社員一人一人が日本一の淡口醤油を造っているという意識を定着させる意味と自分たちの仕事を振り返る意味があります。地域の人から自分たち(企業)はどのように見られているのかを考えることができるようになり、視野を広げる効果があると考えています。地道な活動ですが、続けることで少しずつ広まっていくのだと思います。
最後にこれから社会貢献活動に取り組もうとする企業へ一言をお願いします。
企業の社会貢献活動にも様々なレベルがあり、それぞれに困難があり、上手くいかないことも多々あると思います。しかし、活動を通して様々な人と知り合い、本当に喜んでくださる姿を見ると、エネルギーになり、また協力して良い関係をつくる事によって、活動が上手くいくようになると思います。
そのような中、仕事ではお付き合いがなかった方々とも活動を共に行うことで、仕事以上の関係を築くことができ、それも一つの大きな財産となると思っています。
本日はありがとうございました。