魅力ある職場環境づくりを通じた社会貢献活動
企業名 | 株式会社協同病理 |
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代表者名 | 代表取締役 小川 隆文 |
設立 | 平成6年12月21日 |
資本金 | 1,000万円 |
社員数 | 18人 |
所在地 | 兵庫県神戸市西区大津和2丁目7-12 |
主な事業活動 | 各種試験・研究受託および医療関連サービス(病理学的検査・各種標本作製) |
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掲載日 | 平成22年10月27日 |
株式会社協同病理 代表取締役 小川隆文さんにお話を伺いました。
なぜ、社会貢献活動に取り組もうと思ったのですか。
私たちの仕事は大きく分けて2種類あります。1つが臨床検査、もうひとつが試験・研究の請負の仕事です。顧客は病院、大学、製薬会社等に限定されており、表にでることが少ない狭い世界のため、一般での認知度はどうしても低い仕事です。
しかも、専門知識を要する仕事のため、従事者も限られ、医療系の臨床検査では医学部や保健衛生学部、試験研究の仕事では理学部、農学部、工学部の学生が従事者の対象となります。
しかし、大学卒業程度の知識では、従事するのに十分でなく、会社に入ってからも3年程度実地教育して行く必要があります。このように、対象となる人材も限られ、一人前になるまでに時間のかかる職場なので、会社としても長く勤めてもらいたいということと、担い手を増やしたいという思いがありました。「そのためにはどうしたらいいのか?」ということを考え始めました。
私たちの技術をより広く知ってもらい、社会に役立てたいという思いが社会貢献活動に取り組むきっかけとなりました。
サイエンスボランティアとはどのような活動ですか。
近年の子どもは理科離れが進んでいると言われています。学校以外で理科を楽しく教える教室もありますが、物理・化学を教える事がほとんどで、生物学を教える教室はほとんどありません。このままでは、生物学に興味のない子どもが増え、自分たちの仕事の担い手の絶対数が減ってしまうおそれがありました。そこで、どうしても地味に思われがちな生物学を子どもたちに楽しく学んでもらいたいと始めたのがサイエンスボランティアです。
社内で希望者を募り、サイエンスボランティアのプロジェクトチームを結成しました。まずは、自分たちの仕事を通して生物学の楽しさを知ってもらおうと、「電子の虫眼鏡」というプログラムを考えました。自社の電子顕微鏡を使い、物質を大きく拡大して普段見ることの出来ない世界を体験してもらう、例えば、卵の殻には実は気孔という穴があいていて、そこから呼吸していることや、大根とさつまいもではどちらが甘いかということを拡大してでんぷんを見ることで調べたり、麻と羊毛を見比べて、毛羽立ちから保温性について学ぶようなことを経験してもらいました。
サイエンスボランティアを行う上で難しかったことと今後の展開を教えて下さい。
「電子の虫眼鏡」では電子顕微鏡を使用するため、出前教室として、学校に輸送するとなると、精密機器の運送となり、運送費が非常に高額になってしまいます。また、移動させたあとのセッティングが非常に手間であることから参加者には自社に来てもらう必要がありました。地域の学校に話を持ちかけた時、学校側は1クラス単位(40人程度)での校外学習という形での参加は承諾してくれましたが、受け入れ側のスペースとしては5人が限界で、当初に発案したプログラムは修正の必要がありました。
現在は、電子顕微鏡をそのまま使って授業をするのではなく、拡大画像をデータにして持ち運べるようにするなどプログラムを再構想中です。また、学校に直接、話を持ち込むだけでなく、地域のコミュニティ誌に取り上げてもらい、一般保護者に告知し、家族単位で参加者を募ったり、イベント等にブースを借りて出店しサイエンスボランティアをアピールすることも考えています。
業界のレベルアップを図る活動を行っておられるようですが。
我々の業界は狭い世界で、大きな病院は同じような専門的な臨床検査ができる機関を持つことができますが、300床程度の病院では限界があり、その仕事を私たちが請け負っているのが現状です。そこで、臨床検査を必要とするような症例が少なく、学ぶ場のない病院の検査技師さんの教育のために、機器がそろっている自社で講習会を行っています。
講習会は資格認定試験に合わせて毎週1回、6,7月頃から12月まで約半年かけて行います。受講生は取引のある病院だけでなく、広く業界内全般から参加者を募り、この講習会を行うことによって、業界全体のレベルアップになってくれたらと思います。そのことが、広く患者さんや検診を受ける人のためにもなるのです。
また症例が少なく学びにくいものについては、症例検討会を行っています。病理学従事者は、各病院に1,2人程度で、どうしても自分の病院では高度なことができません。
症例検討会は日本臨床細胞学会兵庫県支部の主催で行いますが、事務局を請け負い、自社の場所提供も行います。自社を会場として行う場合は20数名、大学の講堂を借りて行う場合は60人規模になります。西神戸地域・播磨地域の病院から人が集まり、この症例検討会も、この業界に携わる人たちの地域のたまり場になればよいと思います。
子宮の日LOVE49キャンペーンとはどういった活動ですか。
特殊な業界だからこそ、思い立った活動です。様々な症例を見るうちに20~30代の女性の子宮頚がん発生率が増加している事が判りました。十数年前まで、子宮がんの発生率のピークは40~50代女性でしたが、近年の動向で発生率のピークが20~30代と40~50代の2度あるような状態になっていました。しかし、その半面、20~30代女性のがん検診の受診率が低いことも判りました。これは立ち上がらないといけないと思い、市民団体とともに「子宮の日 がん検診を受けようキャンペーン」を始めました。4月9日「子宮の日」に合わせて、街頭キャンペーンのチラシ配りをしています。また、その他の時期にも子宮がんについてのフォーラムの講師として参加させていただいています。
ワークライフバランスにも積極的に取り組まれているようですが。
最初に話したとおり、私どもの仕事は大学卒業以上の知識を要し、社員を実地教育しますので、長期に渡り従業してほしいという思いがあります。専門知識を身に付けた社員は、他の医療の現場で十分に働くことができるようになりますので、職場環境が整った公立病院より自社に勤め続けてもらうには、労働条件が水準以上に社員にとって魅力ある職場にする必要がありました。職場環境だけでなく、様々な活動を通して仕事に対する意欲と自信を培ってもらえたら、この会社で働く意欲になると考えています。そういったことが、ひいては人材の長期継続雇用に繋がっていくと考えているのです。
これから社会貢献活動に取り組もうとする企業への一言をお願いします。
社会貢献活動に「こうでなければならない」という決まった形はないと思います。お金や時間がなくても、小さなことでできる事があると思います。持続可能な社会貢献のためには、大層に捉えるのではなく、まずはそこで働くことが社会に貢献しているという思いと、その延長でなにかできる事を考えるのが大切なのではないでしょうか。
本日はありがとうございました。