地域の中の一企業として、一住民として
企業名 | 三ツ星ベルト㈱ |
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代表者名 | 代表取締役社長 垣内 一 |
設立 | 大正8年10月10日 |
資本金 | 81億5,025万円(平成20年3月31日現在) |
社員数 | 861名(平成20年3月31日現在) |
所在地 | 兵庫県神戸市長田区浜添通4丁目1番21号 |
主な事業活動 |
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ホームページ | |
掲載日 | 平成20年6月25日 |
三ツ星ベルト株式会社 総務部長 保井剛太郎さんにお話を伺いました。
1919 (大正8) 年創業の歴史ある会社ですが、地域とのつながりは?
当社は、神戸市長田区の真野地区で創業し、以来90年間当地で企業活動を続けています。
会社として本格的にまちづくりに参画を始めたのは、1980(昭和55)年に『真野まちづくり推進会』(注1)が結成された時からです。
ここに住宅がある方は、昼間は外へ働きに行く夜の住民、私たちはこの地へ働きに来る昼間の住民です。
私たちは、夜の住民が留守の間の、昼間のまちの安全を担わなければいけないと考えています。
注1:1977(昭和52)年に長田区長も参加した「まちづくり懇談会」から、翌年には「真野まちづくり検討会議」を結成してまちづくりの構想案を検討した。1980(昭和55)年に「まちづくり構想」を住民に提案し、「検討会議」は発展的解消し、「真野まちづくり推進会」となる。神戸市と「まちづくり協定」を締結した第1号である(1982(昭和57)年)。
阪神・淡路大震災の時には社員の方が活躍なさったそうですね。
長田区は地震後の火災により大きな被害が出ましたが、真野地区でも火の手が上がっていました。当社には業種柄、手押しポンプ車3台が装備されており、夜勤の社員が約60名おりました。消火栓は壊れて使えませんでしたが、幸い敷地内に井戸があり、住民と社員が協力し合って消火作業を行いました。井戸が枯れると運河から水を引き、延焼を食い止めました。
一方、工場敷地内の体育館では、当社の社員が教える、地域の小学生のための剣道教室が15年続いていました。教室の世話役をしている地域の方からの要請を受け、その体育館には約400人の被災者を受け入れました。
会社が地域を、地域が会社を、よく知っているからこそできる連携でした。今も月2回、一斉防災訓練を行い、備えを怠っていません。
震災後、本社を真野地区に戻されたそうですが。
震災以前の1992(平成4)年、当社は真野地区に工場と研究所を残し、ハーバーランドに本社を移しました。当時は地下鉄がなく、当社を訪れるお客様に不便だったことも理由の一つです。
しかし震災後、「真野地区の復興に力を貸して欲しい」との住民一致の要請を受け、2000(平成12)年に発祥の地である真野地区に本社屋を戻しました。翌年に地下鉄海岸線の開通が予定されていたことも再移転を後押ししてくれました。
社屋のオープニングパーティーには地域の方々を招待しました。これが地域イベントの始まりでした。
地域とともに多彩な活動を展開されています。
2001(平成13)年に、社内にボランティア団体『三ツ星ベルトふれあい協議会』を結成しました。西河社長(当時)の「請われて帰ったからには、住民の気持ちに応える活動を」との思いからです。
地域に根ざした企業として、まちの発展と住民の幸せを願い、「ふれあいイベント」開催などの活動をしています。
たなばたまつりには、当社の工場がある京都府綾部市から竹笹を寄贈いただき、真野地区のみなさんが願いを書いた短冊がひらめく七夕飾りが町中を彩ります。
四国工場があるさぬき市の全面協力で、地引網とさぬき手打ちうどんの体験も実施しています。
他にも、入学お祝い会やふれあいクリスマス会などを開催していますが、イベントはすべて社員の手作りです。
新人から社長までが序列や部門の壁を越え、一緒に汗を流すことによって、社員間のコミュニケーションが取れるようになり、そのせいか、我が社は比較的言いたいことを言える会社だと思います。
イベントが成功し、参加されたみなさんの笑顔にはすばらしい達成感を覚えます。
このように地域とのお付き合いが続いてきたのは、トップのリーダーシップであり、継続的に活動を行っていくことが必要であると、社員教育を続けた結果だと思います。
環境教育にも関わっていますね。
神戸市環境保全基本計画のひとつで、神戸市内の小中学校を対象とし、阪神・淡路大震災で被災した子どもたちの心を癒す取り組みとしてスタートした「ビオトープ計画」(注2)に協力しています。
当社が製造している土木遮水工法に使用する遮水シート「ミズシート」を無償提供するとともに、施工ボランティアで支援しています。PTAや先生方と何回も打ち合わせを重ね、一緒にビオトープを作り上げています。
1996(平成8)年以来、85の学校・施設で施工し、社員のボランティア参加者は延べ約1,000人になります(2007(平成19)年12月現在)。
注2:神戸市環境局では、これらのビオト-プの創造事業が環境教育を進めていくうえで有効な事業であると考えており、学校等と連携して学校が主体的に進める環境教育の場づくりを側面から支援している。
ボランティアのために相当な時間や労力を費やしておられますが。
我が社は、「人を想い、地球を想う」を基本理念として、“ものづくり”をする会社です。「ものづくりに関わる人間は、人間道を持たなければならない」との考えのもと、“ひとづくり”に力を入れています。
2002(平成14)年にはじまり、全国から社員が集まる『徳星塾』は、中間管理職の育成を目的としていますが、勉強していることは日本のことや芸術文化です。我が社は海外にも拠点があるので外国で日本のことを話せるように、また人間の幅を広げられるようにと、毎月1回開催しています。
また、当社は朝7時から8時半まで、交代で会社や最寄り駅の出口などに立ち、地域の人たちや通学中の子どもたちへ挨拶する運動を行っています。会社から挨拶の場所までの行き帰りにはごみ拾いをしています。これも我が社の社員教育です。
ですから、『三ツ星ベルトふれあい協議会』は、究極の社員教育と言えますね。我が社が社員教育をすることによって地域とつながり、地域に貢献することができます。企業活動と社会貢献は両立すると思います。
平成20年度自然環境功労者として環境大臣賞を受賞、またCSR融資(注3)の適用も受けていますね。
大臣賞は、私たちが汗を流して一生懸命活動してきたことが評価され、たいへん名誉な受賞でした。またCSR融資も、社会貢献が企業活動を妨げるものではなく、企業の有益となることを実証してくれました。
しかし、消費者に直接商品を販売しない当社は、それを目指して活動してきたわけではありません。地域と一体となって一つ一つの活動を続けることで、みなさんに認めていただき、しっかりした企業だと思っていただけるようになって、受賞につながったのだと思っています。
注3:日本政策投資銀行が開発したスクリーニングシステム(格付システム)により企業の環境経営度を評点化、優れた企業を選定し、得点に応じて3段階の適用金利を設定するという、「環境格付」の専門手法を導入した世界で始めての融資制度。
これから「社会貢献活動」に取り組もうとされている事業者の方にアドバイスをお願いします。
これからCSRをはじめようと考えている企業には、何か一つできることを見つけてください、と申し上げたい。地道に、何か一つから始めるといいのではないでしょうか。そして、それを続けることだと思います。
また、私たちは“汗をかく”ということを重視しています。地域活動を行うにあたっては、われわれが一生懸命働いているのを見て、まちの方々も協力してくださっているのだと思います。
企業活動への直接の影響は少ないかもしれませんが、社会貢献活動を通じて得られるものは大きいと思います。