地域の方に寄り添う「よろず相談信用金庫」
~“優しさ”“思いやり”の心を育む地域活動~
事業者名 | 但陽信用金庫 |
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代表者名 | 理事長 桑田 純一郎 |
設立 | 1926年6月10日 |
資本金 | 1,050百万円 |
職員数 | 666名 |
所在地 | 兵庫県加古川市加古川町溝之口772番地 |
主な事業活動 | 預金、融資、為替、代理業務、保険販売業務 等 |
ホームページ | https://www.tanyo-shinkin.co.jp/ 但陽信用金庫のページへ |
掲載日 | 平成26年3月25日 (更新日:平成29年2月2日) |
但陽信用金庫 理事長 桑田 純一郎
教育訓練室 室長 吉田 健一郎
よろず相談室地域共生課 課長 板倉 真典 さんに
お話を伺いました。
活動のきっかけについてお聞かせください
きっかけは、阪神・淡路大震災が起こった時です。何か被災地のためにしたいと考え、市に何かすることはないかと聞きに行きました。
そこで紹介されたのが、グリンピア三木で被災地への物資を仕分け・配送するボランティアでした。ボランティアをするにあたって、まず私を含む職員全員を10名1組にしてローテーションを組み、交代で土日も休まず活動を行いました。
しかし、4月下旬にはそのボランティア活動も終了してしまい、何か出来ることはないかと考えました。そこで、今度は加古川市内の仮設住宅を訪問し、何か困ったことがないか「御用聞き」をすることにしました。こちらもグリンピア三木の時と同じく、職員を組分けし、交代で活動しました。
ある日、私が仮設で活動していたところ、ある高齢者の方が「脱水機が動かないから見て欲しい」と言われて、脱水機を確認したところ、回転部分に靴下が2、3枚挟まって動かなくなっていました。
私が靴下を引っ張り出すと、脱水機は動き出しましたが、自分にとっては、簡単なことでも、高齢者の人にとってはとても大変なことなんだと実感しましたね。
職員には、その日の活動が終わったら、活動報告書に何でもいいから感想を書いてもらいました。報告書には職員の色々な思いが書かれていて、こういった活動は人間教育にとって一番だと感じました。この思いが今の活動の根底にあると思います。
その後しばらくして、加古川市内の仮設住宅が無くなった時に、日常生活の中で何か困っている高齢者や障がい者の方は、仮設住宅だけではなく、地域にもいらっしゃるだろうと考え、“地域のお手伝い”として活動を継続しようと思いました。
御社の地域活動についてお聞かせください
当金庫では、教育訓練室に「地域共生課」という地域活動を所管する部署を設けています。その背景には、地域活動は企業にとって大切なことであり、ずっと続けていきたいという思いがあります。
この地域共生課で、職員のローテーションを組み、当金庫が設立したNPO法人「但陽ボランティアセンター」の事務所に職員を毎日派遣しています。
この「但陽ボランティアセンター」では、移送サービスやベルボックスといった活動を行っています。
まず、移送サービスですが、当法人が所有しているリフト付き福祉車両で、車いすで生活されている方の送迎を行っています。お出かけの目的や行き先は制限せず、通院や買物等の移動のお手伝いをしています。ただ、法律の関係がありますので、利用者の方には会員になっていただき、年会費の他は無料でご利用いただいています。
但陽ボランティアセンターの「ベルボックス」は、利用者が通報ボタンを押すと、自動的に事務所の電話につながり、電話があれば、事務所から折り返し電話をします。
設置している機器によっては、こちらが電話をとると、そのままインターホン機能で呼びかけ、利用者の方に何か異常がないかどうかを確かめる仕組みになっています。もし、応答がなければ、予め登録いただいているご近所の方に
連絡をとって確認いただいたり、事務所から救急車を呼ぶなどの対応をします。
行政が支給している緊急通報システムは、押すと 消防署につながるので、なかなか押しにくいという方もいらっしゃいますが、こちらの
「ベルボックス」は気軽に押していただければいいと考えています。利用者の方の中には、話し相手が欲しかったので連絡したという方もいらっしゃいますし、色々な内容のお電話がありますが、担当者がその都度、親身に対応するようにしています。
また、独居高齢者の方の安否確認をするため、渉外担当者による「ケア訪問」を行っています。こちらは、高齢者の方のお宅を定期的に訪問し、安否確認を行うとともに、何か困ったことがあれば、相談してもらっています。高齢者の方の孤独死を防ぎたいという思いから、この活動を行っています。
他にも、高齢者の方に何かあった時のために、当金庫の電話番号を書いたステッカーを電話の上に貼ってもらう取組も行っています。この頃は、詐欺や悪徳商法などが多いですから、すぐに番号が分かるようにという考えから作成しました。
地域を守るのが地域企業の役割だと考えていますので、地域のお祭りなど行事の際には、ボランティアで参加しますし、こういった職員教育をしているためか、職員もボランティアに行くことに抵抗感がなく、自主的に地域の人と触れあってくれています。
新任職員の研修はどのようなことを行っているのですか
新入職員には、実務研修として礼儀、そして「感謝の心」を徹底的に教えます。この研修期間に、ボランティアについてどのようなことをしているかなどの講義をし、どういった活動をするのか勉強してもらいます。
その後、研修を終えて各店舗に配属された後、先輩スタッフの補助として、ローテーションに組み込まれます。そこで、先ほどご紹介した「移送サービス」の運転補助などの活動をしてもらうことになります。
同じ人がボランティアに参加するのは、数ヶ月に1回くらいの頻度になるので、そんなに難しいことではないと思います。
最近では、ボランティアをしたいから当金庫に入社したいといった方も増えてきています。
評価してもらおうと思って地域活動をしているわけではありませんが、こういった人間性教育の結果として当金庫を評価していただければ、嬉しいことだと思っています。
「よろず相談 信用金庫」と名刺に書かれていますが、どういった活動をされているのか、お聞かせください
当金庫では、「よろず相談」として、地域の方の様々な相談にのり、対応しています。相談の内容によっては、当金庫の人間にはできないかもしれませんが、他の人につないだりすることができます。例えば、土地に関する相談であれば、あそこの不動産会社だったら、知っているのではという具合です。
私自身も近所の高齢の方4名に自分の携帯番号を教えており、何かあれば気軽に電話してもらうようにしています。顔も見に行きますし、そういった活動が大事だと思っています。こういった活動をすることで、職員のボランティアに対する意識付けが出来ているのかもしれません。
地域活動やボランティアに対する思いをお聞かせください
何か災害等が起これば、企業もボランティアに駆けつけますが、ある段階から引いてしまいます。これは、企業がボランティアを「してあげる」という思いが、どこかにあるからではないかと私は考えています。そうではなく、
頭を切り替えて、ボランティアを「させていただく」という気持ちを身に着けることが、とても大切だと私自身実感しています。
また、地域の人と接する機会が多いボランティアをする人間には、“優しさ”や“思いやり”の心が必要だと思います。
当金庫の活動も全て「させていただく」という精神のもと、継続して実施しており、職員には地域の人に対して“優しさ”をもって、活動に取り組んでもらいたいと考えています。
活動を行う上での課題点、問題点についてお聞かせください
どうしてもNPO法人というと、どんな活動をしているのかわからず、社会的認知度が低いので、もっとNPO法人も含めた民間が、活動しやすい仕組みがないといけないと
思っています。これからの時代、高齢者の方たちを支えるには、民間の力が必要になってくるでしょうね。行政と民間企業と金融機関がタイアップし、知恵を出して情報提供などをする仕組みがあればいいと考えています。
また、ボランティアを「してあげている」から「させてもらう」という意識が企業ボランティアの原点だと考えます。相手の方に喜んでいただくのが、私はとても嬉しいと思っていますので、そう思える人材をどうやって育成していくかがこれからの課題だと考えています。
地域に対してどういった思いを持っておられますか
私は地域を活性化するためには、地域の人がどれだけその地域を愛するかが重要だと思っています。まちづくりには、地域の人に地域への思いを、まずは持ってもらわなければいけません。自分たちのまちは自分たちで守ろうという意識が大切だと思っています。
ただ、地域への意識を持つには、何かきっかけが必要だとも思います。そのためにも、地域の“お宝探し”をしてほしいですね。地域開発する際には、コミュニティと一緒に考えて、地域の特性を活かすことが重要だと考えています。
地域活動を行うことで、社員の方にはどのような意識の変化がありましたか
周りの人に対して、心配りが出来るようになったように思います。一生懸命頑張っている人には、周りのみんなが応援してくれます。そういった環境から、企業はファミリーという意識が強く、何か事情がある職員に対してもみんなで守ろうという意識があります。
このように職員が思うことが出来るようになったのも、ボランティアの効果ではないかと思っています。ボランティアは、全てのことにつながっており、企業にとって大変プラスな活動であると私は考えています。
今後の抱負、活動の展開をお聞かせください
この活動を、永遠に続けていきたいと思っています。今後に向けて、移送サービスの車両を増やす計画もあります。これからも高齢者や障がい者の方など、社会的に弱い立場の人に対して、“優しさ”や“思いやり”を持って活動していきたいと考えています。
本日はありがとうございました。