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兵庫県内の社会貢献企業を紹介

多様な活動資源とノウハウを持つ「企業」の社会貢献活動を促進し、「ひょうごの地域づくり活動」の輪を一層広げていくため、県内企業による社会貢献活動の実践事例や県の支援・促進施策をご紹介します。

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自社資源である「音と映像」を生かした社会貢献活動
~それぞれの世代に、それぞれのカタチで音楽による次世代育成~

神戸      

事業者名 TOA株式会社
代表者名 代表取締役会長兼社長 井谷 憲次
設立 昭和24年4月(創業:昭和9年9月1日)
資本金  52.8億円
 社員数 3,130名
所在地 兵庫県神戸市中央区港島中町七丁目2番1号
主な事業活動 拡声放送機器、通信機器、その他情報伝達機械器具の製造販売等
音響機器、映像機器、その他電子・電気機械器具の製造販売等
音響・映像に関するソフトウェアの企画・制作等
電気通信を利用した各種サービスの提供
電気通信事業
ホームページ http://www.toa.co.jp/
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掲載日 平成26年11月26日
(更新日:平成29年2月6日))

TOA株式会社 経営企画本部 広報室 吉村 真也 さん にお話を伺いました。

TOA株式会社について教えてください

                                                 

  私どもは、業務用音響機器と映像機器の専門メーカーで神戸を拠点に創業80年になります。BtoB(企業間取引)企業で、民生用機器はほとんど扱っておりません。
どういう所に採用されているかというと、駅とか空港の交通施設案内放送を提供しています。空港であれば、90%以上のシェアを誇っており、飛行機に乗ったことのある人であれば、TOAの音を耳にして頂いていると思います。そのほか、商業施設の案内放送やBGM、火災時の避難誘導放送など、防災・減災害分野などもあります。身近にはあるのですが、スピーカー等については、意匠に配慮し企業ロゴを表示しない場合も多いため社名をご存じの方は多くないと思います。
他には、メガホン、いわゆるハンドマイクですが、これを発明したのもTOAです。
また、ジャンルのひとつに学校用の放送設備、チャイムとか校内放送があります。 。

 

TOA株式会社の考える社会貢献活動とは

 音と映像のメーカーであるTOAが、社会のお役にたてることは、自社資源である「培ってきた技術」、「スピーカー等の音響機材」、「技術者」等を有効活用し、得意分野である、音によるコミュニケーションを通して地域社会に貢献することであると考えています。「企業市民」として社会に信頼され、社会と共に発展していく「かけがえのない企業」になることを目指しています。
 最も力を入れているのは「音楽」で子どもたちの成長を育むことです。学校、教育に対して何かお役に立ちたいという思いから、TOA Meet! Music! Concept活動を行っています。
他にも、イベントや文化・芸術活動、地域のスポーツ振興をサポートしています。神戸ルミナリエでは、毎年変わる光の作品テーマに合わせ、オリジナル楽曲を制作し、会場内に設置された約100個に及ぶスピーカーシステムとともに、光のイベントを盛り上げています。また、神戸マラソンでも、スタート地点のスピーカーをはじめ、音の演出で大会をサポートしています。

さきほどお話にでてきたTOA Meet! Music! Conceptについて詳しくお聞かせください

 音楽による次世代育成を推進する目的で、「それぞれの世代に、それぞれのカタチの音楽とのすばらしい出会いを」をコンセプトに、子どもたちの成長過程にあわせた4つの個別音楽活動をサポートしています。
 小中学生には「TOA Music Workshop(TMW)」で音楽との最初の出会いをテーマに、仲間とともに音楽に参加する喜びや楽しさを感じて欲しい。
 中学生には「トライやる・ウィーク」のなかで作品を創作し発表するという、音楽を創る喜びを体験してもらいます。
 中高生を対象にした「神戸JAZZ」では、ステージスタッフなどの裏方も含めた音楽のプロと接し、音楽で生きる世界への扉を開きます。
 そして、専門学生・大学生以上を対象とした「匠ワークショプ」では、プロの技を伝え、明日の音楽の担い手を育成します。
 1998年に「トライやる・ウイーク」の受け入れをはじめてから、段階的に活動を拡充していき、2007年から今の形に落ち着いています。
伝えたいのは、子どもたちの可能性です。音楽と接することで、子どもたちに自身の音楽性や表現力を再認識してもらい、そして、今まで知らなかった「新しい自分」に出会ってもらう。そのことをこの活動を通してサポートしています  

「TOA Music Workshop」(略称:TMW)のプログラムはオリジナルだそうですね

 日本で、学校現場に芸術ワークショップを導入していこうという動きが始まったのは2000年前後です。その頃は、美術系のアーティストによるものが多かったと思います。ただ、少人数を対象に時間をかけて行うワークショップが主流であったため、全ての学校で同じように実施できるわけでは無かったと思います。
  もっと多くの学校に体験して欲しい。ならば、学校が総合学習の時間などに、授業の一環として学年単位でプログラムに参加できるような、利用しやすく短時間で体験できるプログラムを作ろうと考えました。そこで、NPO法人子どもとアーティストの出会いと協働し、ゼロからプログラムをいっしょに開発しました。
 この音楽とダンスを組み合わせたオリジナルプログラムは、プロのミュージシャンの迫力のある生演奏で音楽を体感し、プロのダンサーのリードのもと友達と一緒に思いっきり体を動かす90分という構成になっています。
 子どもたちは、主体的に参加し、全員でひとつの音楽を創ることを通じて、「いままで知らなかった音楽と出会うこと」、「普段は気づかなかった友達のよさに気づくこと」、「自由に表現する楽しさを知ること」を体験します。
 それら、驚き、ワクワクし、時間を忘れて音楽の世界にのめり込む体験から、プログラム開始直後は緊張して表情の堅い子どもたちも、プログラムが進むにつれ、自分の心を自由に開放し、自由に感じ、発見し、伸び伸びと自分を表現していきます。その姿を見ていると、子どもたちの大きな可能性を感じます。
 参加校は、毎年公募により決定していて、今年は、全国13校にて実施します。2005年から開始し、今年で開催回数は60回を超え、TMWに参加した子どもたちは7000名を超えました。

大きな事業ですが推進体制はどのようになっていますか

 これだけの大きなプロジェクトを運営するのは広報室という一組織だけではなかなか大変です。いかに社内の他の部署と連携していくかということが、他の企業で社会貢献活動に携わっておられる方々の共通の悩みでもあります。
 幸いTOAは、国内の営業部門と強力な連携関係をつくることが出来ています。こういった社会貢献活動の場合、社内に1割の応援者がいれば良い方だと言われているなか、それをはるかに上回る数の営業担当者が、積極的に活動に参加しています。これは、TOAの誇りです。
 具体的には、今年度であれば、北海道から熊本までの学校で、ワークショップの出張公演を行いますが、実施校の下見等の調整や会場設営は、国内販売企画課と全国にあるTOAの営業所が主に担当します。そのため、我々広報室はプログラムの内容や、子ども達へのケアなどコンテンツに関することに集中できています。TOAには、「良いことには、積極的に参加する。」という風土があります。これはTMWの社外スタッフから聞いたことですが、TOAの従業員は現場で本当に積極的に、頼まれずとも自分のことのように動いてくれるのだとか。おもしろいこと好きが多いということだと思いますが、そんな風に社外の方から言っていただけると嬉しいですね。
 学校は、TOAにとって大きな市場ではありますが、直接商品を販売しているわけではありません。我々はメーカーであり、実際の販売や工事・施工は、取引先様にお願いしています。ですので、地域の営業担当者にしても、直接、ユーザーである学校関係者、ましてや子どもたちに接する機会は多くありません。
 けれども、TMWの本番当日では、TOAのスタッフジャンパーを着ていると、子どもたちに非常に歓迎されるので、営業部員たちは、びっくりしながらもうきうきしています。
 TMWにスタッフとして参加することで、自社に誇りを感じ、モチベーションが変わったとの声も聞こえてきます。
 グループ内のスタッフ、グループ内の資源を使って手作りでやっているTMWは、TOAの思いのつまった活動です。

TOA Meet! Music! Concept!の他のプログラムについてもお聞かせください


  1998年に兵庫県から「トライやる・ウィーク」の受け入れ依頼がありました。「トライやる・ウィーク」は、県内の全公立中学校2年生を対象に、近隣の施設や企業で一週間の社会体験を行う全県的な取り組みです。TOAでは、自社施設ジーベックホールの設備を使って、プロのミュージシャンとともに音楽をつくり、最終日には、地域の皆様に発表するという企画で受け入れました。コンサートには、学校関係者や卒業生をはじめ、多数の地域住民の方にご来場いただき、地域と企業の交流の場として親しまれています。 一週間という短い期間に、作品を一から作りあげるのですが、信じて任せると子どもたちは中学生とは思えないパフォーマンスをみせます。
 4年ぐらい前からは、近隣企業のアパレルメーカーの(株)ワールドと異業種コラボレーションでステージをいっしょに作っています。音の会社がつくる音楽作品の舞台衣装を、服の会社のトライやるメンバーが担当します。(株)ワールドチームは衣装の企画から仮縫い、納品、さらには、その衣装が発表される場も経験します。
 このような形で、単なる職業体験にとどまらず、子どもたちが将来の自分を見つめるために必要なことを体験する機会を提供しています。子どもたちにとって、この経験は、一生忘れない貴重な思い出であり、企業のファンづくりにもつながっています。過去にトライやる・ウィークで受け入れた子が社員として入社してきたという嬉しい例もあります。
 「KOBE JAZZ」は、2005年から実行委員会形式で実施していて、事務局はグループ会社である(株)ジーベックが担っています。音楽のプロを目指している高校生が、プロのミュージシャンから演奏の指導を受け、その集大成として、生徒とプロのミュージシャンによる合同コンサートを開きます。コンサートの裏方業務も、専門学校で音響等を学んでいる学生たちがプロの指導のもと行います。人材育成的意味合いが強いプログラムだと言えます。出演校は年々増えています。近年は、神戸と東北、二つの被災地同士の中高生が、音楽を通してつながっていくというテーマも加わり、単なる音楽の祭典を超えた展開となっています。

 「匠 Workshop」は将来音楽に関する職業に就きたいと考えている若者を主に対象とした人材育成事業です。第一線で活躍する音楽プロデューサーや作曲家をゲストに、職業として音楽に関わるためのプロの技を伝達しています。音楽業界の最前線を垣間見ることのできるこのワークショップは、音楽同業界での活躍を目指す若者たちに貴重な経験を与えています。

各方面から活動が評価されていますね

 2008年にいただいたNPO法人パートナーシップ・サポートセンター主催の「パートナーシップ賞」は、NPOと企業の優れたパートナーシップ事例を評価し表彰するもので、「TOA Music Workshop」事業について、TOAとNPO法人子どもとアーティストの出会いとの協働が評価されました。
2010年には、メセナアワード「文化庁長官賞」を受賞しました。こちらは芸術文化振興に加え、地域活性化や次世代育成に貢献する企業メセナ活動を評価するものです。
いずれも、TOAが持つ資源である、ホールやスタッフの技術・スキルを活かして、NPOや教育機関と連携しながら、多くの子どもたちの表現力や創造性を高めてきた、TOAの目指す地域ぐるみの次世代育成を、評価いただいたものです。
これらの評価が、社内外の評価につながり、さらなる活動の飛躍につながっています。
これからもTOAは、「音と映像」を通じて、豊かな市民社会の実現に貢献していきます。

本日はありがとうございました。

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