社会から必要とされる会社を目指して
事業者名 | 株式会社ウィル |
---|---|
代表者名 | 代表取締役社長 坂根 勝幸 |
設立 | 平成7年6月12日(創業 平成5年10月1日) |
資本金 | 284,350,850円 |
所在地 | 兵庫県宝塚市逆瀬川1-14-6 |
主な事業活動 | ○流通事業 ○リフォーム・リノベーション事業 ○家具事業 ○開発分譲事業 ○賃貸事業 ○受託販売事業 ○不動産取引派生事業(ファイナンシャルプランニング業務、紹介業務など) ○その他の事業(広告代理業務、コンサルティング業務) |
ホームページ | https://www.wills.co.jp/ 株式会社ウィル |
掲載日 | 平成31年1月8日(令和5年2月6日更新) |
株式会社ウィル
広報室 参事 岡田 洋子 様
経営戦略チームリーダー 渡瀨 小百合 様
にお話を伺いました。
宝塚市で始まった「介助犬のウィル」
■創業20年余りで東証2部上場
株式会社ウィルは宝塚市で25年前にスタートした不動産会社です。2007年にジャスダックに上場。2015年には東証2部に市場変更を行ないました。不動産に関わるサービスをワンストップで提供することや、独自の人材育成のノウハウなどで、メディアからも注目を集めています。最近では大阪大学・神戸大学合格の専門塾も始めました。
■シンシアの物語に感動して
ウィルでは2003年から介助犬支援の活動を続けています。身体障害者の身の回りの介助をする介助犬は、盲導犬に比べるとマイナーな存在でした。それが同年に放送されたドラマ『シンシア~介助犬誕生ものがたり』によって、多くの人に知られました。事故で下半身不随になった宝塚市在住の木村佳友さんと愛犬のシンシアの物語は多くの人の感動を呼びました。
ウィルでも社内に募金箱を設置したり、フリーマーケットの売上げを寄付するなどの活動を始めました。それらは2008年に「地域とともに歩むひょうごの企業」で紹介しましたが、その後、活動内容もより広がったということで、再度取材に伺いました。
あれから10年。ウィルはどのように歩んできたのでしょうか。
危機を乗り越えた原動力は「人」だった
■リーマンショックを乗り切る
2008年は、リーマンショックによる大不況が日本を直撃した年でした。ウィルも大変な苦境に陥り、一時は社員の給料の支給にも苦しむほどでした。銀行からは、何度もリストラを勧められました。しかし、当時の社長が拒否。社員が一致団結して頑張り、ついに1人のクビも切らずにV字回復を果たしました。
リーマン危機で倒産した中小企業も数多くありましたが、ウィルはそこを乗り切り飛躍したのです。その理由はなんだったのでしょうか。
■創業間もない時期に、新卒採用に切り替える
その答えは「人」でした。人を大事にしている企業は数多くありますが、ウィルの人材育成は個性的です。
ウィルが創業した1993年はバブル崩壊の時期にあたり、しかもその翌々年の1995年には阪神・淡路大震災が起こっています。その年から、ウィルは採用を新卒一本に切替えました。業界経験者を中途採用すれば即戦力になり、教育にかけるコストを省けます。しかしそれよりも、時間をかけて人材を育成し、社員が価値観を共有する選択をしたのです。
こうして結束を固めた人材が、ギリギリの所で会社を支えました。
岡田さんは、「みんな、ウィルとそこで働く仲間が好きだったから、だから、頑張れた」と語ります。
■社員の相互理解のために時間とお金を使う
ウィルでは採用に当たって、残業や休日出勤などについても、ありのままに説明しています。また、社員間の相互理解のために多大な労力と時間を割いています。
例えば、現在社員旅行は年4回、バーベキューや演劇も行っています。これは単なる福利厚生ではなく、イベントの準備を共同作業で行うことが互いの意思疎通につながる、と考えているからです。社内運動会には採用内定者も参加し、社内のバースペースでは、学生とグラス片手に語り合うこともあります。
2013年に入社した渡瀨さんは、OB訪問や会社訪問をした時、「みんな楽しそうに仕事をしていた」ことが、入社の決め手になったと言います。ウィル独特の企業文化についても、「仕事を通じて自分を高めたい人には合う」と、さらりと答えました。
社会貢献のために様々な活動を行なう
■不況の中で始めた契約募金
不況の痛手がまだ癒えない2010年、ウィルは「契約募金」という新しい社会貢献の仕組みを始めました。 これは仲介・受託取引の契約1件につき1千円、自社開発物件の引渡し1件につき1万円をプールして寄付するというものです。これは営業所でお客様にも説明しています。
これまでの募金活動に比べると、金額が大きくなることに加えて、企業活動と寄付がリンクするというメリットがありました。 不況だから寄付なんかできないではなく、不況だからこそやる、という逆転の発想です。初年度に84万円だった契約募金の額は、業績の回復とともに順調に増え、昨年度は約160万円と倍増しました。
それ以外にも、社内に寄付型の自販機を設置し、使用済切手やボトルキャップも集めています。
こうした小さな活動をウィルは、コツコツと続けています。
■入社式で寄付金の贈呈式を行なう
ウィルでは毎年一度、入社式の日に合わせて、契約募金等の寄付金の贈呈式を行っています。今年は、兵庫介助犬協会に120万円、シンシア基金に30万円、東日本大震災の支援金として中央共同募金会に約10万円を寄託しました。式にはPR犬とトレーナーも参加し、実際の介助の様子を実演しています。
なぜ、入社式という新人にとっての晴れの舞台に、あえて介助犬のイベントを行うのでしょうか。それは新入社員たちに、「これはどこかの部署の誰かの仕事ではなく、全社で行っている活動だ」と、認識してもらうためです。
■地域の新たなつながり「ダイバーシティ甲陽園」
ウィルはこれ以外にも、ユニークな地域づくりの活動を行っています。西宮市甲陽園にある老舗の料理旅館が閉館した後、シェアハウスにリノベーションしたのです。設計に当たっては、関西の建築関係学部に在籍する学生を対象に、最優秀賞に100万円の賞金を出して、コンペを実施しました。
シェアハウス「ダイバーシティ甲陽園」は、2015年8月竣工、2016年1月から本入居が始まりました。地上3階、地下1階建て(延べ床面積722平方メートル)で、6~7畳の個室が25室。地下1階のフリースペースには防音室3室も併設されており、一般の方も利用可能。様々なイベントが開かれています。
2018年10月28日に行われたジャズライブには、地域の方々も含めて50人が参加し、大変な盛り上がりになりました。もちろん、介助犬のPR活動も併せて行われました。
小さな積み重ねが、文化を創る
■感謝の心を持つ
この10年、ウィルは会社の危機の中でも、コツコツと社会貢献活動を続けてきました。会社がこれまでやってこられたのは、自分(社員)だけの努力ではなく、お客様や地域の皆様を始め多くの方々に支えられてきたからだ、と感じているからです。
若い社員たちにも、ちょっと仕事ができるからといって傲慢になってほしくはない、周りに生かされているという自覚と、感謝の思いを常に持ってほしい、そういう思いで人材育成にあたっている、ということです。
■ささやかなことを継続する
「文明はレンガ建築、文化は砂山」。これはウィルの企業文化を表現する言葉です。風が吹けば、一瞬で砂山は崩れます。ですから文化は、維持するために常に手入れが必要なのです。
ウィルのやっている活動も、一つ一つはささやかなことです。介助犬の支援が、本業の数字につながるわけでもありません。ですが、そのささやかな活動を積み重ねることに大きな意味があるのだと思います。
その意味について、言葉ではなかなか説明できません。しかし強いて表現すると、こういった活動が文化として社内に根付くことこそ、活動の最大の成果だ、ということではないでしょうか。
「今後もできることを地道に続けていきたい。その結果、ウィルのことを、世の中に必要な会社だと思ってもらえれば」
岡田さんは、そうインタビューを締めくくりました。
本日はありがとうございました。