酒造りを通じて丹波の素晴らしさを伝える
事業者名 | 株式会社西山酒造場 |
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代表者名 | 代表取締役社長 西山 周三 |
創業 | 1849年(嘉永2年) |
資本金 | 2千万円 |
所在地 | 兵庫県丹波市市島町中竹田1171 |
主な事業活動 | 清酒・焼酎・リキュール・スイーツ・ノンアルコール製品等の製造・販売 |
ホームページ | http://www.kotsuzumi.co.jp/officialweb/ 株式会社西山酒造場 |
掲載日 | 平成31年3月7日 |
株式会社西山酒造場
代表取締役社長 西山 周三 様
広報ご担当 岡田 実沙子 様
にお話を伺いました。
170年続く老舗の酒蔵の後継者となる
■高浜虚子も愛した日本酒「小鼓」
丹波の老舗西山酒造場は、伝統を大事にしながら、常に新しい挑戦を続けている酒蔵です。本社社屋は国の登録有形文化財に登録されている、瓦葺木造二階建て。表には石碑があり、「ここに美酒あり 名づけて小鼓といふ」という俳人高浜虚子の言葉が彫られています。
これは三代目の西山泊雲(本名:亮三)が、弟の泊月とともに俳句に傾倒し、高浜虚子に師事した縁によるものです。泊雲・泊月の兄弟は、「丹波二泊」と呼ばれる高名な文化人でした。
■テレビ局の営業マンから六代目となる
現在の社長である西山周三さんは六代目。大学時代はスキー部のキャプテンを務めたスポーツマンです。酒蔵の長男としていずれは後を継ぐ身でしたが、卒業後は読売テレビに就職しました。営業マンとして活躍し、ナショナルブランドの大手企業も担当しました。しかし華やかな世界に身を置きながらも、故郷丹波への思いを抑えることはできませんでした。。
西山さんはテレビ局を辞め、郷里に戻る決心をします。今から16年前のことでした。
伝統を尊重しながら改革を目指す
■対立が起こるのは話し合っていないから
当時、若者の日本酒離れが進み、業界全体の売上げは縮小傾向にありました。西山酒造場も例外ではなく、大きな改革が必要なのは明らかでした。 しかし酒造りの現場を仕切っているのは、伝統を大事にする職人たちです。西山さんははやる気持ちを抑え、積極的に現場に顔を出し、職人たちと対話を繰り返しました。
時に対立することもあったはずですが、西山さんはこう言い切ります。「対立が起こるのは、話し合っていないから。きちんと説明すれば分かってくれる」
■よい酒を醸すのに、国籍や性別は関係ない
蔵元の世界では、古くからの様々なしきたりがあります。西山さんはそれらを大胆に変えていきました。
例えば蔵元の多くは男社会で、酒造りに直接かかわる蔵人はほとんどが男性でした。しかし西山酒造場では、蔵人の半数近くが女性です。その中にはアメリカ出身の女性と台湾出身の女性もいます。よい酒を醸すのに、国籍や性別は関係ありません。
西山酒造場では、正社員とパートを合わせて50人ちかくが働いていますが、その3分の2は女性です。
■従業員一人ひとりが主役
また伝統的な職人の世界では、一人前になるまで長期間の修行が必要だとされています。しかし西山さんには、テレビ局時代に入社2年程度で責任ある仕事を任せてもらえた体験があったので、若い社員にどんどん仕事を任せました。
西山さんは日本中の蔵を何百軒も見学してきました。その結果、分かったことがあります。それは発展する蔵は、雰囲気が明るいということです。西山酒造場も、そういう蔵元を目指しています。
■スイーツやノンアルコール飲料の製造も
西山さんは、これまで培った発酵・蒸留技術を活かしながらも、大胆に日本酒以外の製品の開発に乗り出します。
例えば、ぶどうの搾りかすを原料にしたブランデーの一種、グラッパや、梅酒などのリキュール類。さらにスイーツや甘酒ヨーグルトなどのノンアルコール製品の製造にも乗り出しました。
現在では日本酒の売上げは、全体の半分強です。伝統を活かしながらも、たゆまぬイノベーションを続ける姿勢がそこに表れています。
地域貢献事業とボランティア
■酒米の田植え、稲刈りそして蔵見学
西山酒造場では、地元の竹田小学校の五年生を対象に、毎年、酒米「兵庫北錦」の田植えと稲刈り体験、そして蔵見学を行っています。
一学年20人程度の小さな学校ですが、13年続けたことで、約260人の子どもたちに、丹波の伝統産業の一端を伝えたことになります。
その効果が将来どういう形で現れるのか、西山さんにも予測しきれていません。ですが、「この活動は絶対に続ける」そうです。その後、こんなふうに話してくれました。
「子どもたちは、いずれ大人になって丹波を離れるかもしれません。でも、どこかで偶然立ち寄った居酒屋で『小鼓』を見つけて、『ああ、これはあの時見学に行った蔵で造っているお酒だな』と、故郷を思い出して一献傾けてくれれば、こんなうれしいことはありません」
■月一回のクリーン作戦
西山さんは故郷に戻った時、川原にゴミが放置されて汚れているのに気づきました。衣類やタイヤそれに電化製品もありました。それを五代目である父親が黙々と清掃していました。
それを見た西山さんは、社員に呼びかけて、全員で定期的に清掃活動を行うことにしました。
清掃活動を続けることで、さまざまな発見と成果がありました。まず、ゴミを拾うことで、自分がゴミを捨てなくなったことです。だから、この活動に参加する人が増えれば、いつかゴミゼロが達成できると考えています。
もうひとつは、環境への意識が生まれたことです。例えば仕入れに際しても、ムダを避けてゴミを少なくしようとするようになった、と言います。
■豪雨災害とボランティア
地域のためにボランティア活動を続けていた西山さんが、逆に助けられたこともありました。 2014年8月に丹波地方を豪雨が襲い、西山酒造場も事務所や倉庫などが浸水しました。一時は電話等も不通になり、製品にも大きな被害がでました。豪雨の爪痕は、酒米を栽培していた農家にもおよびました。
復興までは容易な道のりではありませんでしたが、全国から駆けつけた多くのボランティアが、被災した物の運び出しや泥かきなどを手伝ってくれました。
そのため、翌月の26日には自社店舗での営業を再開することができたのです。
丹波の魅力を世界に発信する
■日本酒を造りたいのか、地域を良くしたいのか
改革を始めた当初、西山さんは従業員にこう問いかけていました。「日本酒を造りたいのか、地域を良くしたいのか」と。
それは西山さんの根底に、いい日本酒を造りたいという思いだけでなく、故郷丹波をより良くしたいという情熱と、モノづくりによって多くの人に喜んでもらいたいという気持ちがあったからです。
■丹波の特産物を生かす
日本酒以外の分野に大胆に乗り出した西山さんですが、こだわっているのは丹波の特産物を生かした製品作りです。
酒造りにはすべて、竹田川の伏流水である蔵内の井戸水「椿寿天泉」を使っています。酒米には兵庫の名産「山田錦」のほかに、「兵庫北錦」や「但馬強力」などを積極的に使っています。
また、丹波特産の栗や黒豆を使った焼酎を製造しています。特製のスイーツには、地元の栗と黒豆に加えて、これらの焼酎も使われています。
■「小鼓」をきっかけにして、丹波の素晴らしさを知ってほしい
西山酒造場の製品はこれまでに世界32カ国に輸出され、海外でも数多くの賞を受賞しています。「小鼓」ブランドが海外で有名になるにつれて、それを造っている蔵元に関心を持つ人も増えてきました。中には関空からタクシーで蔵見学に来られた方もいるそうです。
「小鼓」をはじめ自然の恵みがもたらす商品をきっかけにして、それを育んだ丹波の美しい自然や人情についても知ってもらえれば、と西山さんは考えています。
最後に西山さんはこう結びました。 「丹波は本当に素晴らしいところです。人情は豊かで食べ物もおいしい。これからも酒造りを通じて、丹波を明るくしていきたいと思っています」
本日はありがとうございました。