5 法人格取得後の義務等

(1)法人の情報公開と事業報告書等の提出について
 法人は、毎事業年度初めの3か月以内に、前事業年度の事業報告書・貸借対照表・役員名簿などの書類を作成し、主たる事務所に備え置くとともに、所轄庁に提出することが必要です。また、社員その他の利害関係人の請求があった場合は、正当な理由がある場合を除いて、閲覧させなければなりません。

なお、所轄庁は、法人から提出を受けた書類(過去3年分)を一般に公開(閲覧)に供します。


@  法人の主たる事務所への備え置き(法第28条第1項)

 法人は、毎年事業年度初めの3カ月以内に次の書類を作成し、その年の翌々事業年度の末日までの間、主たる事務所に備え置かなければなりません。

@ 前事業年度の事業報告書
A 前事業年度の財産目録
B 前事業年度の貸借対照表
C 前事業年度の収支計算書
D

役員名簿(前事業年度において役員であったことがある者全員の氏名及び住所又は居所並びにこれらの者についての前事業年度における報酬の有無を記載した書面)

E

前事業年度における社員のうち10人以上の者の氏名(法人のときは、その名称及び代表者の氏名)及び住所又は居所を記載した書面

A 利害関係人への公開〔閲覧〕(法第28条第2項)

 法人は、その社員その他の利害関係人(債権者など)から請求があったときは、次の書類を閲覧させなければなりません。

@ 事業報告書
A 財産目録
B 貸借対照表
C 収支計算書
D

役員名簿(前事業年度において役員であったことがある者全員の氏名及び住所又は居所並びにこれらの者についての前事業年度における報酬の有無を記載した書面)

E

前事業年度における社員のうち10人以上の者の氏名(法人のときは、その名称及び代表者の氏名)及び住所又は居所を記載した書面

☆ただし、設立後最初の@からEまでの書類が作成されるまでの間は、設立当初の財産目録を、合併後最初の@からEまでの書類が作成されるまでの間は、法第35条第1項の〔合併の認証の通知があった日から2週間以内に作成された〕財産目録を、代わりに閲覧することとします。

F 定款
G 定款の認証に関する書類の写し
H 定款の登記に関する書類の写し

B 所轄庁における公開書類(法第29条第2項)

 所轄庁は、法人から提出された次の書類を一般の人々に公開〔閲覧〕しますが、そのうち@からEの書類については、過去3年間に提出されたものに限り公開します。

@ 事業報告書
A 財産目録
B 貸借対照表
C 収支計算書
D

役員名簿(前事業年度において役員であったことがある者全員の氏名及び住所又は居所並びにこれらの者についての前事業年度における報酬の有無を記載した書面)

E

前事業年度における社員のうち10人以上の者の氏名(法人のときは、その名称及び代表者の氏名)及び住所又は居所を記載した書面

☆ ただし、設立後最初の@からEまでの書類が作成されるまでの間は、設立当初の財産目録を、合併後最初の@からEまでの書類が作成されるまでの間は、法第35条第1項の〔合併の認証の通知があった日から2週間以内に作成された〕財産目録を、代わりに閲覧することとします。

F 定款
G 定款の認証に関する書類の写し
H 定款の登記に関する書類の写し

 なお、閲覧の場所は、法人設立の手続などの際の公開〔縦覧〕と同じく、下記のとおりです。

  地域協働課、神戸県民局、阪神南県民局、阪神北県民局、東播磨県民局、北播磨県民局、中播磨県民局、
  西播磨県民局、但馬県民局、丹波の森公苑、淡路県民局

  (これらの閲覧場所のほか、中央県民情報センターでもご覧いただけます。)

 
(2)登記について
1) 設立登記手続

 登記手続は、組合等登記令に基づいて行います。法人の設立の登記は、認証後2週間以内に、主たる事務所の所在地を管轄する法務局においてしなければなりません。(組合等登記令第2条第1項)

 また、従たる事務所の登記については、主たる事務所の登記を併せて、主たる事務所の所在地を管轄する登記所に対して一括して申請が可能です。(※別途登記手数料が必要。)なお、登録免許税はかかりません。

@ 登記事項
登記事項(組合等登記令第2条第2項) 内     容
1. 目的及び業務 定款に記載された目的、事業の種類
2. 名称 定款に記載された名称
3. 事務所 主たる事務所の所在地、従たる事務所の所在地
4. 代表権を有するものの氏名、住所及び資格 定款に記載された設立当初の役員名簿のうち、理事全員の氏名、住所
5. 存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由 定款に記載された存続期間又は解散事由
6. 資産の総額 財産目録に記載された正味財産額
登記申請に必要な書類
・登記申請書、登記用紙(法務局が指定する用紙)
・添付書類

認証書又は認証書の謄本(認証書原本を提出の場合は、あわせて原本還付申請をしておくこと)、理事全員の就任承諾書、財産目録、場合によっては、設立総会の議事録

A 印鑑届

 設立登記の際には、法人代表者の印鑑届けが必要です。
法人代表者印を作成し、設立登記申請と同時に印鑑届書を提出します。代表者個人の印鑑証明書(発行後3カ月以内のもの)を添付することが必要です。
 複数の理事が代表者印をもつ場合(例えば、理事長、副理事長の印を作成する場合など)は、それぞれ届出が必要です。

B その他の注意事項

 法人を設立した場合には、改めて財産目録を作成し、それを常に事務所に備えておくことが必要となります。なお、これを怠った場合、理事、監事は20万円以下の過料に処せられるので注意してください。(法第49条第2号)

   

2) その他の登記

 設立登記後に、登記事項に変更等があった場合は、その都度、変更の登記をしなければなりません。  

〔例〕定款の変更、事務所の移転、理事の変更、資産の総額の変更、解散、合併、清算結了など

※資産の総額については、毎事業年度終了後に、事業年度末日現在の額に変更の登記を行う必要があります(組合等登記令第3条第3項)。

*定款変更の登記について
 定款の変更については、設立や合併と異なり登記が設立要件とされていませんが、登記事項に関する変更があった場合は、変更登記を行わなければ、その変更は第三者に対抗(主張)できません(法第7条第2項)。
*合併の登記について
 合併については、吸収合併、新設合併の別を問わず、登記が成立要件とされており、合併の認証を得ただけでは、効力が生じません(法第39条第1項)。

3) その他
 設立、合併、定款の変更以外に登記を要する場合としては、解散、清算結了等が挙げられますが、登記を怠ると、理事、監事、清算人は20万円以下の過料に処せられますのでご注意ください(法第49条第1号)。 

(3)納税について(別表参照)

法人に対しては、いろいろな税金が課せられます。ここでは、一部例を挙げていますが、詳細については、お近くの税務署、県税事務所等にご相談ください。
国税である法人税については、公益法人と同様に、法人税法に規定された収益事業*1)からの所得に対しては、課税されることとなります。それ以外からの所得については非課税です。
 また、消費税については、2年前の事業年度の課税売上高が、1,000万円を超えている場合に申告が必要とされています。
 地方税も、収益事業から生じた所得に対しては、課税されます。また、法人住民税(均等割)は、所得の有無に関わらず原則として課税されます。

   

*1 法人税法上の収益事業(法人税法第2条第13号、法人税法施行令第5条第1項)
 特定非営利活動促進法に基づく特定非営利活動に係る事業、その他の事業の区別にかかわらず、法人税法に規定された34業種に該当する事業は、収益事業とみなされます。
特定非営利活動に係る事業であっても、法人税法上は、収益事業とみなされることがあります。)

     

・販売業、製造業その他次の事業で、継続して事業場を設けて営まれるもの
物品販売業、不動産販売業、金銭貸付業、物品貸付業、不動産貸付業、製造業、通信業、運送業、倉庫業、請負業、印刷業、出版業、写真業、席貸業、旅館業、料理店業その他の飲食店業、周旋業、代理業、仲立業、問屋業、鉱業、土石採取業、浴場業、理容業、美容業、興行業、遊技所業、遊覧所業、医療保健業、一定の技芸教授業等、駐車場業、信用保証業、無体財産権の提供等を行う事業、労働者派遣業


【別表】(平成21年4月現在)

 〔国 税〕

  法人税(収益事業から生じた所得に対して課税)

年間所得 800万円以下 18.0%
年間所得 800万円超 30.0%

 
 
〔地方税〕

 (1)法人の都道府県民税・市町村民税(標準税率)

@ 均等割(地方公共団体内に事務所等を有する法人について課税)
都道府県 2万円【※兵庫県では2万2千円(平成18年4月1日以降に開始する事業年度〜】
市町村 5万円
兵庫県では、収益事業を行わない法人に対する法人県民税(均等割)を減免します。
減免を希望する法人は、納期限(4月30日)までに減免申請書等を県税事務所へ提出してください。
A 法人税割(収益事業から生じた所得に対して課された法人税を基礎に課税)
都道府県 法人税額の 5.0 %
市町村 法人税額の12.3 %


(2)法人の事業税(収益事業から生じた所得に対しての課税)

年間所得 400万円以下  5.0 %
年間所得 400万円超〜800万円以下 7.3 %
年間所得 800万円超 9.6 %
都道府県、市町村によって、税率等が異なる場合があります。
(4)労働基準法及び社会保険について
 NPO団体(ここでは特定非営利活動法人に限らず、広く非営利組織一般として使います。)は、継続的に活動を行いますので、有給職員を1人でも雇用すると、労働基準法別表第1に定める「適用事業」となり、使用者は所定の様式「適用事業報告」を遅滞なく所轄労働基準監督署へ提出しなければなりません。なお、法人格を有するか否かは関係ありません。

@ 労働者を解雇するときは、30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。(労働基準法第20条)
A 賃金は直接、全額を支払わなければなりません。(労働基準法第24条)
B 労働時間の制限(労働基準法第32条)、休憩時間の設定(労働基準法第34条)、年次有給休暇等。(労働基準法第39条)
C 年少者、女性についての労働制限。
D 就業規則
就業規則の作成
 常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、行政官庁に届出なければならないと定められています。(労働基準法第89条)
 就業規則に定めるべき事項についても、法定されており、その内容を変更する場合にも行政官庁に届け出なければなりません。
 NPO団体も、常時10人以上の職員を雇っている場合には、就業規則を作成しなければなりませんが、職員が、10人未満であれば、作成を義務づけられてはいません。
健康保険、厚生年金保険
 健康保険は、企業等で働く従業員とその家族の健康を守り、私傷病の際の負担を軽減するための社会保険です。
 厚生年金保険は、労働者が老齢になって働けなくなったりしたときなどに年金によって老後の生活保障を図ろうとするものです。
 いずれの保険についても、法律(健康保険法第13条、厚生年金法第6条)に列挙された事業を行う事業所で、法人では常時1人以上、個人では常時5人以上の従業員を使用しているものは、強制適用事業所として法律により当然に保険関係が成立することになっていますが、これにあたらない事業所については加入は任意とされています。
 NPO団体の場合は、個々の活動内容により列挙事業に該当するか否かを検討しなければなりません。例えば、営利を目的としない場合でも、反復継続的に物の販売を行う場合には強制適用事業所とされますし、障害者授産施設等社会福祉法に定める社会福祉事業も強制適用事業所となります。列挙事業に該当しない場合は、加入については任意ということになります。
なお、任意加入の場合で加入しないときは、職員は、国民健康保険、国民年金に加入するということになります。

 労災保険、雇用保険
 労災保険は、労働者が業務上の理由によりあるいは通勤途上で災害を受け、負傷したり病気になった場合に保険給付が行われるものです。
 雇用保険は、労働者の失業時の生活安定のために給付がなされているものです。
 労災保険も雇用保険も、労働者を使用する事業であれば適用事業とされますので、NPO団体も職員を雇う限り適用されることになります。したがって、加入手続をとっておらず団体が保険料を支払っていなくても、労働者は保険給付を受けられ、団体は遡って保険料を徴収されることになります。
      
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