4 法人の管理・運営
(1) 活動の原則
法人は、特定の個人・法人その他の団体の利益を目的として事業を行ってはなりませんし、法人を特定の政党のために利用してはなりません。
また、法やその他の法令、及び定款の定めにしたがって活動しなければなりません。
(2) 役員(法第15条)
法人には、理事3人以上及び監事1人以上を置かなければなりません。
理事は、それぞれが法人の執行機関として、法人の業務を代表します。ただし、定款によって代表権を制限することができます。
監事は、理事の業務執行の状況、法人の財産の状況について監査します。監事は理事又は法人の職員を兼ねることはできません。
役員になれる人については、親族の数の制限など法で一定の制限(*1、*2)が設けられています。
*1
役員の欠格事由(法第20条)
法人の公益性に配慮して、次の欠格事由のいずれかに該当する者は、役員になれません。
・成年被後見人・被保佐人 ・破産者で復権を得ないもの ・禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から2 年を経過しない者 ・法又は暴対法等(*ア)により、罰金の刑に処せられ、その執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者 ・暴力団の構成員等〔(暴力団の構成員(暴力団の構成団体の構成員を含む。)若しくは暴力団の構成員でなくなった日から5年を経過しない者〕 ・ 法第43条の規定により設立の認証を取り消された法人の解散時の役員で、取消しの日から2年を経過しない者 |
*ア | 暴対法等とは |
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律、暴力行為等処罰に関する法律 等 |
*2 役員の親族等の排除(法第21条)
特定の役員とその家族が法人を私物化することを避けるため、それぞれの役員について、配偶者又は3親等以内の親族が1人を超えて含まれてはなりません。また、それぞれの役員とその配偶者及び3親等以内の親族が、役員総数の3分の1を超えて含まれてもなりません。
したがって、役員の配偶者と3親等以内の親族は、
@役員総数が6人以上の場合は、1人までは、役員になることができます。
A役員総数が5人以下の場合は、1人も役員になることはできません。
(3) 総会の開催(法第14条の2、第14条の3)
法人の事務は、定款で理事等の役員に委任しているもの以外は総会の決議に基づいて行います。
通常総会は少なくとも毎年1回開催しなければなりません。
理事が必要であると認めるときや総社員の5分の1以上から請求があったとき(この定数は定款で増減可能)は、臨時総会を開催することができます。
(4) その他の事業(法第5条)
法人は、特定非営利活動に係る事業に支障がない限り、その他の事業を行うことができます。その他の事業で収益を生じた場合は、その収益を特定非営利活動事業のために使用しなければなりません。また、その他の事業に関する会計を特定非営利活動に係る会計から区分しなければなりません。
(5) 会計の原則(法第27条)
法人の会計は、次の原則に従って行わなければなりません。
@ 会計簿は正規の簿記の原則(*1)に従って正しく記帳すること。 A 財産目録・貸借対照表・収支計算書、会計簿に基づき、収支・財産状態に関する真実な内容を明瞭に表示したものとすること。 B 採用する会計処理の基準及び手続は毎年継続して適用し、みだりに変更しないこと。 |
*1 正規の簿記の原則とは
企業会計の基本原則を定めた企業会計原則に定められた言葉であり、正確な会計帳簿を作成するための原則です。具体的には、一般に、次の3つの内容が含まれていると解されます。
@取引記録が、客観的にして証明可能な証拠によって作成されること。 A記録計算が明瞭正確に行われ、かつ順序区分など体系的に整然と行われること。 B取引記録の結果を総合することによって、簿記の目的に従い、企業の財政状況及び経営成績あるいは財産管理の状態などを明らかにする財務諸表が作成できること。 |
(6) 役員の変更(法第23条)
法人は、新しく役員が就任した場合や役員の氏名・住所に変更があった場合には、所轄庁に役員変更等届を提出しなければなりません。
(7) 定款の変更(法第25条)
定款を変更するためには、総会の議決を経た上で、所轄庁の認証が必要です。ただし、軽微な事項については、所轄庁の認証は不要ですが、この場合には、定款変更後に所轄庁に届け出ることが必要となります。
@ | 次の事項に係る定款の変更を行う場合は、兵庫県知事の認証を受けなければなりません。 なお、兵庫県外へ事務所を移転する場合(又は兵庫県外にも事務所を新設する場合)は、変更後の事務所の所在地の都道府県知事(又は内閣総理大臣)が所轄庁になりますが、申請書類の提出は、兵庫県知事を経由しなければなりません。 |
・ 目的
・ 名称
・ その行う特定非営利活動の種類及び当該特定非営利活動に係る事業の種類
・ 主たる事務所及びその他の事務所の所在地(所轄庁の変更を伴うもの)
・ 社員の資格に得喪に関する事項
・ 役員に関する事項
・ 会議に関する事項
・ 会計に関する事項
・ 事業年度
・ その他の事業を行う場合には、その種類その他当該その他の事業に関する事項
・ 解散に関する事項
・ 定款変更に関する事項
A | 次の事項に係る定款の変更を行った場合は、定款の軽微な変更に当たりますので、所轄庁に届出を行わなければなりません。 |
・ 主たる事務所及びその他の事務所の所在地(所轄庁の変更を伴わないもの)
・ 資産に関する事項
・ 公告に関する事項
(8) 解散(法第31条、第32条)
法人は、総会での議決・所轄庁の認証等の一定の手続を経て、解散することができます。
なお、解散後の清算人は、原則として理事が就くこととなります。
@ | 法人は、次の事由により解散します。 |
@ 社員総会の決議
A 定款で定めた解散事由の発生
B 目的とする特定非営利活動に係る事業の成功の不能
C 社員の欠亡
D 合併
E 破産手続開始の決定
F 設立の認証の取消し
A | 法人が、@のBの「目的とする特定非営利活動に係る事業の成功の不能」に基づいて解散をしようとする場合は、所轄庁に対して申請を行い、認定を受ける必要があります。 | |
B | 法人が、@の@、A、C、Eの事由により解散を行った場合は、所轄庁に届出を行う必要があります。 | |
C | 法人が解散する場合、残余財産は、定款で定めた者(*1)に帰属しますが、定款に定めがない場合で、国又は地方公共団体に譲渡しようとする場合は、所轄庁に認証申請を行い認証を受ける必要があります。また、残余財産について、定款に定めがなく、認証申請も行わない場合は、国庫に帰属することとなります(別途、清算事務費を見込んでおく必要があります。)。 |
*1 | 定款で定めることができる残余財産の帰属先 |
残余財産の帰属すべき者は、次に掲げる者のうちから選定されなければならない。 @ 他の特定非営利活動法人、A 国又は地方公共団体、B 公益社団法人又は公益財団法人、C 学校法人
D 社会福祉法人、E 更生保護法人
(9) 清算(法第31条第4項、第32条の3)
清算人は、解散後に登記事項証明書を添えて、所轄庁に解散の届出を行う必要があります。また、清算人は、清算結了後に登記事項証明書を添えて、所轄庁に清算結了の届出を行う必要があります。
(10) 合併(法第33〜39条)
法人は、総会での議決・所轄庁の認証等一定の手続を経て、別の特定非営利活動法人と合併を行うことができます。この場合の所轄庁は、合併後の法人の事務所の所在する都道府県知事(2以上の都道府県に事務所を設置する場合は、内閣総理大臣)になります。
兵庫県知事の認証を受けるときは、合併により設立する又は合併により存続する法人が、兵庫県内のみに事務所を設置する場合に限られます。
(11) 所轄庁による監督等
所轄庁は、法令違反等一定の場合に、法人に対して、報告を求めたり、検査を実施し、また、場合によっては、改善措置を求めたり、設立認証を取り消すこともできます。また、法に違反した場合には、罰則が適用されることがあります。
@ | 報告徴収・検査(法第41条第1項) | ||
法人が法令や法令に基づく行政庁の処分又は定款に違反する疑いがあると認める相当な理由があるときは、所轄庁は、法人の業務又は財産の状況に関し、報告をさせ、又はその職員に検査をさせることができます。 | |||
A | 改善命令(法第42条) | ||
所轄庁は、次の事項が認められる場合は、法人に対して、その改善のために必要な措置をとるよう命ずることができます。 |
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B | 設立の認証の取消し(法第43条第1項、第2項) | ||
所轄庁は、次の場合には、聴聞手続を経て、法人の設立の認証を取り消すことができます。 | |||
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C | 罰則規定(法第47条〜第50条) | ||
改善命令に違反した場合は、50万円以下の罰金に処せられるほか、登記することを怠ったときや、各種届出義務、事業報告書等の作成・備置き・提出義務等に違反したときには、20万円以下の過料に処せられることがあります。 |