特定非営利活動促進法の一部を改正する法律の概要
1 改正の趣旨
平成10年12月に施行された特定非営利活動促進法の附則において、施行の日から3年以内に検討を加え、必要な措置が講ぜられるものとするとされていた。
今回、特定非営利活動の一層の発展を図るため、その活動の種類を追加し、設立及び合併の認証に係る申請手続を簡素化するとともに、暴力団を排除するための措置を強化する等の改正が行なわれた。
2 改正の概要
(1)活動分野の追加(合計 17分野)
法第2条の別表に記載される分野が17項目になりました。
(_は、追加された分野)
- @保健、医療又は福祉の増進を図る活動
- A社会教育の推進を図る活動
- Bまちづくりの推進を図る事
- C学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
- D環境の保全を図る活動
- E災害救助活動
- F地域安全活動
- G人権の擁護又は平和の推進を図る活動
- H国際協力の活動
- I男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
- J子どもの健全育成を図る活動
- K情報化社会の発展を図る活動
- L科学技術の振興を図る活動
- M経済活動の活性化を図る活動
- N職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
- O消費者の保護を図る活動
- P前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
*定款の中で、従来の12番目の活動分野を「別表第12号」のように号数で引用している場合には、記載されている文言、申請年月日および成立年月日から、「別表第12号」の示す内容が客観的に判別できるので、このためだけに定款変更の必要はない。
(参考)追加される活動分野の中で考えられる具体的な事業例
・情報化社会の発展を図る活動
インターネットなど新しい情報通信技術手段の活用の促進を図る事業・科学技術の振興を図る活動
大学の関係者が各自の研究を基にある科学技術の普及を図る事業
・経済活動の活性化を図る活動
ベンチャー教育等、起業活動の環境整備を図る事業、商店街の活性化を通 じて地域全体の経済活性化の促進を図る事業・職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
路上生活者や障害者の職業訓練・就労支援を図る事業
・消費者の保護を図る活動
消費者に対して商品に関する情報提供、商品知識の普及を図る事業
(2)「その他の事業」の明確化
「特定非営利活動に係る事業」以外の事業として「その他事業」を規定し、特定非営利活動に係る事業に支障がない限り行うことができる。
また、「その他の事業」に関する会計は、特定非営利活動に係る事業に関する会計から区分し、特別の会計として経理しなければならない。
*従来の「収益事業」を行なっている既設の法人は、定款の文言を「その他の事業」という文言に改めるなどの定款変更は必要ない。(説明)
「その他の事業」とは、特定非営利活動以外の事業のことで、従来の「収益事業」はこれに含まれ、このほか、従前のNPO法に明示的に規定されていなかった狭義の「その他の事業」(例えば、特定非営利活動以外の公益事業や、会員間の相互扶助のための福利厚生、共済等の事業)も含まれる。
(3)設立及び合併の認証の申請に係る申請書類の簡素化
@申請書に添付する書類のうち、次の書類をそれぞれ統合
・役員名簿及び報酬を受ける役員名簿
・役員の宣誓書及び就任承諾書
A申請書に添付する書類のうち、次の書類を省略
・設立者名簿
・設立当初の財産目録
・設立当初の事業年度を記載した書面
(説明)
財産目録を全く作成する必要がないというわけではない。
・法人の設立時に財産目録を作成する必要がある。(NPO法第14条)
・登記時には、資産総額を証する書面を作成する必要がある(組合等登記 令)
・財産目録を事務所に備え置くとともに、財産目録を所轄庁に提出する必要がある。(NPO法第28条及び第29条)
(4)定款記載事項の変更
申請書類の省略、その他の事業の明確化に伴い、定款に次の内容を明記・事業年度
・「その他の事業」に関する事項
(5)暴力団を排除するための措置の強化
@設立及び合併の認証の基準の強化
暴力団の構成員(暴力団の構成団体の構成員を含む。以下同じ。)でなくなった日から5年を経過しない者の統制の下にある団体でないことを加える。
A役員の欠格事由の追加
暴力団の構成員又は暴力団の構成員でなくなった日から5年を経過しない者(以下「暴力団の構成員等」という。)を加える。
B意見聴取
所轄庁は、特定非営利活動法人(設立認証の申請に係る団体を含む。)について暴力団である疑い若しくは暴力団若しくは暴力団の構成員等の統制の下にある団体である疑い又はその役員について暴力団の構成員等である疑いがあると認めるときは、その理由を付して、警察庁長官(所轄庁が内閣総理大臣の場合)又は警視総監又は道府県警察本部長(所轄庁が都道府県知事の場合)の意見を聴くことができる。
C所轄庁への意見
警察庁長官又は警察本部長は、特定非営利活動法人について暴力団であると疑うに足りる相当な理由若しくは暴力団若しくは暴力団の構成員等の統制の下にある団体であると疑うに足りる相当な理由又はその役員について暴力団の構成員等であると疑うに足りる相当な理由があるため、所轄庁が当該特定非営利活動法人に対して適当な措置を採ることが必要であると認めるときは、所轄庁に対し、その旨の意見を述べることができる。
(6)役員の任期の伸長
定款で役員を社員総会で選任することとしている特定非営利活動法人にあ っては、後任の役員が選任されていない場合に限り、任期の末日後最初の 社員総会が終結するまでその任期を伸長することができる。*ただし、定款に次のことを明記する必要がある。
@役員を社員総会で選任すること
A後任役員が選任されていない場合に限り、社員総会における後任役員の 選任までの間、前任役員の任期伸長を可能とすること
(7)事業の変更を伴う定款変更の認証の申請に係る申請書類の追加
事業の追加を伴う定款変更を行う場合には、定款変更の認証申請書に、
次の書類を添付
・定款の変更の日の属する事業年度及び翌事業年度の事業計画書
・定款の変更の日の属する事業年度及び翌事業年度の収支予算書
(説明)
事業の追加(縮小も含む)を伴う定款変更は、事実上、設立時と同様に慎 重に審査を行う必要があり、このため「事業計画書」及び「収支予算書」につ いては、団体の活動状況を判断する上で重要な書類であることから、設立 時と同様に2事業年度の書類が申請書類として求められることとなった。
(8)予算準拠の規定の削除
収入及び支出は、予算に基づいて行わなければならない旨の規定を削除
(ただし、この規定が削除されたからといっても、予算を作成する必要はある)
(説明)
従前のNPO法では、第27条の会計の原則において予算準拠の原則が規 定されていましたが、商法等ほかの一般的な法令にはその規定はないこと から、NPO法人だけが他の法人とは異なり、一旦成立した当初予算に法人 運営が過度に制限されると理解される可能性があったため今回削除された。
(9)虚偽報告、検査忌避等に対する罰則規定の新設
法第41条第1項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は 検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき(理事、監事及び清算人)は、20万 円以下の過料に処するものとする。
(10)課税の特例
租税特別措置法に定める、いわゆる認定NPO法人に対する寄附又は贈与 をした者に係る寄附金控除等の特例制度があることについて、明記する。
3 施行期日
平成15年5月1日から施行